断層変位の向きとしては、北方地域の断層群の中に横ずれが優勢である可能性のあるものもみられるが、大部分は上下方向の変位が卓越していると判断される。
断層の形状としては、落ち側に断層面が傾斜し、かつ、階段状に落ちる典型的な正断層(岳ケ下山・十文字原・伽藍岳北・坂山)と、断層面の傾斜が少なくとも一部は落ち側と逆方向で、形状からみると、必ずしも正断層とは言い切れない断層(亀川・朸小野(派生)・飛岳1・秋山など)がある。また、断層面の条線から横ずれが確認できた断層(飛岳5)もある。今回の調査地域は、テクトニクス的にみると、その中に様々の異なる応力場の地域を含んでいると考えられ、今回得られたデータは、各断層の性格が地域毎に微妙に異なっている可能性を示唆するものとも考えられる。
また、いくつかの断層(亀川・朸小野(派生)・伽藍岳北・飛岳5)においては、変位の累積もしくは複数回の断層活動が確認された。海域の活断層でも、すでに同程度の規模の断層で変位の累積があることが報告されている(岡村ほか,1992など)。このことが、これらの活断層が、それ自体で起震断層として活動することを示しているとは考えにくいが、長さや変位量の小さな活断層であっても、それぞれ独自の活動履歴を有していることを示唆しており、海域の活断層において提言された「地震系列」(岡村ほか,1987)の考え方が、陸上の活断層にもあてはまる可能性を示していると考えられる。