(2)活断層

本地域の活断層は、立石山・飛岳の両火山体および周辺山麓のより新しい堆積物の堆積面の変形として認定できる。九州活構造研究会(1989)、活断層研究会(1991)では、北から順に立石山南1・同2・坂山・飛岳1〜6・若杉の10条の断層が認定されている。今回の調査でも、崩壊地形と重なっているため断層変位地形とは認定し難い飛岳3断層を除く、9条の断層に対応する変位地形や断層露頭を見出した。ただし、従来飛岳2断層の西方延長と考えられていた変位地形は、今回見出した露頭の状況からみて、飛岳1断層の延長と考えられる。このため飛岳2断層独自の変位地形としては、飛岳の開析された尾根筋の小規模(変位10m程度)で連続性のよくないものだけになり、この断層を独立した活断層として扱うことは難しいと判断した。この2条を除く断層についての特徴をまとめると次のようになる。

○変位の向き

北側の2条の断層(立石山南1,南2)が北落ち(逆向き断層崖)、その南側の坂山・飛岳1,4の3断層が南落ち、一番南側の飛岳5,6、若杉の3条の断層が北落ち(逆向き断層崖)であり、北落ち・南落ちの断層がそれぞれまとまって分布している。特に坂山・飛岳1,4,5,6と若杉の5条の断層は全体として小グラーベン(南北方向の幅約2q)を構成しているようにみえる。

○活  動  度

火山体や周辺斜面の変位量からみると、坂山・飛岳5・若杉の3条の断層が活動度B級、立石山南1,南2、飛岳1,4,6の各断層が活動度C級であり、上記の小グラーベンの両側で活動度が大きいと評価できる。

○最新活動時期

坂山・飛岳5・若杉の3条の断層と飛岳1断層については、K−Ah火山灰以後に活動した証拠が得られているか、もしくは、地形・地質的にみてその可能性が高いと判断できる(Loc.30、Loc.33など)。これは、上記の活動度の評価とも整合的である。

○断層活動イベント

白滝川の本−支流はそれぞれ若杉・飛岳5の両断層によって閉塞され、その際の堆積物が上流側に段丘化した平坦面をつくっている。飛岳5断層では、AT火山灰の可能性の高い火山灰とK−Ah火山灰の降下層準を挟み、少なくとも2〜3回、断層運動による谷の閉塞が生じたと考えられる(Loc.31)。若杉断層では、このような堆積物は確認されていないが、断層による閉塞で形成された段丘がさらに変位を受けている可能性がある(Loc.32)。

以上のように、本地域には、小グラーベンを成して比較的活動度の高い断層が密集している。今後は、白滝川本−支流の閉塞谷の堆積物およびその変形について検討することで代表的な断層(飛岳5,若杉)の活動性についてより詳細な情報を得ることができると考えられる(坂山断層については、次節参照)。