(1)地形および地質

別府市湯山から伽藍岳、由布院町中釣を結ぶ線より北側で、別府北断層より南側の地域である。3−2−2節で述べたように別府北断層を挟んで本地域の北側には、鹿鳴越火山岩類(岳ヶ下山付近)と西ノ台流紋岩類が分布する。いずれも溶岩の堆積面が比較的残っており、北方へ緩傾斜する平坦面を成している。

別府北断層の南側には、高平山火山の噴出物が分布する。これは、「別府」図幅(星住ほか、1988)では猫ヶ岩山および高平山をつくる溶岩と十文字原(高平山の北〜東方)・松塚(高平山の北西方)の両岩屑なだれ堆積物とされている。しかしながら、今回の調査で岩屑なだれ堆積物の分布域とされている地域は、大部分が角閃石安山岩質の火砕流堆積物で覆われていることが確認された(図3−2−5参照、以下、「高平山火砕流堆積物」と呼称する)。星住ほか(1988)では、十文字原・天間付近のゆるやかな起伏のある地形を岩屑なだれ堆積物の堆積面とみなしているが、地質構成からみると、一部を除き火砕流堆積物が開析されてできた地形とみた方がよいと考えられる。自衛隊十文字原演習場内では、この火砕流堆積物が軽微な不整合で径3mに達する巨礫を含む岩屑なだれ堆積物を覆う状況が確認できる。前節で述べたように、高平山火山の年代は、20〜30万年BPであるが、この火砕流堆積物を変位基準面として用いることにより、火山体の地形面を変位基準とした場合より活断層の評価基準を明確にできることになった。

また、高平山火山噴出物の南側には活発な硫気活動を生じている伽藍岳火山と、調査地域で唯一かんらん石を含む苦鉄質安山岩質の溶岩流から成る鬼箕山火山が位置している。これらはいずれもAso−4火砕流より新しい活動で生じたものであり、鬼箕山火山は、K−Ah火山灰で覆われている。