これらの火山体はいずれも別府−由布地溝北縁の断層によって山体の南側が地溝内に落ち込んでいる。西ノ台流紋岩類は浸食を受けているものの、溶岩の堆積面の形状を残すと思われる北方へ緩く傾斜する平坦面がみられる。
鹿鳴越火山では、古い火山麓扇状地が北方へ広がっている。この面は開析は受けているが、尾根部には、10°以下のほぼ一定の傾斜で北方へ緩く傾く面が残されており、埋谷面の等標高線を描くと、北方へ放射状に広がる形状が復元できる。
鹿鳴越火山は、地形的に独立したいくつかの火山(西方から岳ヶ下山、尼蔵岳、鳥屋岳、唐木山)から成ると考えられるが、今回の調査ではその詳細については検討していない。ただし、このうちの岳ヶ下山付近に分布する溶岩は北方へ緩く傾斜する平坦面をかなり残しており(西ノ台流紋岩の傾斜より勾配はやや大きい)、他の火山とは形成時期や組成が異なっている可能性があると思われる。
なお、この火山の火山麓扇状地の表層付近には輝石安山岩質ではあるが、複数の岩質の大〜巨礫(地表付近ではほとんどクサリ礫化している)からなる堆積物が広く分布しているが、この面より地形的に低い位置に、輝石安山岩質の新鮮な石質火砕流堆積物がみられることがある。このことからみると、「扇状地」の形成史は単純ではないと考えられるが、本報告では地形面全体の形状からみて、「古火山麓扇状地」と一括しておく。