また、海域の活断層についての地球物理学的データについては、前出の(3)項で、広域テクトニクスに関するデータについては(7)項でそれぞれまとめた。
・ 重力探査データ
調査地域内では、京都大学地球熱学研究施設の由佐教授のグループにより、由布院断層と朝見川断層を対象に断層調査のための重力探査(福田ほか,1994など)が実施されている。由布院断層の一部ではリニアメント付近で断層の兆候が得られているが、朝見川断層については、断層の兆候が得られた位置は、リニアメント位置よりかなり北方である(別冊資料集参照)。
広域的重力データとしては、上記の京大グループや地質調査所による探査データが公表されている(駒澤・鎌田,1985、楠本ほか,1996)ほか、最近名古屋大学の志知教授により、複数の機関の既往探査データの見直し・再評価がなされている(図3−1−18−1、図3−1−18−2参照)。特に志知教授の解析結果からは、従来の公表データでは、あまりはっきりとは読みとれない由布院断層から堀田・朝見川断層に至る地溝南縁部の断層に対応する深部の地質構造が、明瞭に抽出できる。
・ 反射法弾性波探査データ
陸上では、上記京都大学のグループにより、別府市の海岸線沿いの測線と、由布院盆地を南北に横断する測線で反射法弾性波探査が実施されている。後者では、由布院盆地を埋積する厚い湖成層(基底深度1,000m程度)の存在が確認されているが、由布院断層や盆地北方の断層群については、確実なデータは得られていない(由佐ほか,1992)。前者においても、別府扇状地の地下構造や朝見川断層についての確実な情報は得られていないとのことである(由佐、私信)。
一方、別府湾海域においては、同グループにより深さ4qまでの深い構造がとらえられており、三波川帯基盤と領家帯基盤の関係が検討されている。(図3−1−19参照)
・ 温泉関係のデータ
別府市の多数の温泉のデータをもとに、地下水の広域流動解析が行われている(大沢ほか,1994など)。これらの資料と地質構造について論じた文献はあまりないが、例えば吉川・北岡(1983)では、別府市南部について、朝見川断層と同方向のWNW−ESE方向の地下水流動に加え、ENE−WSW方向の地下水流動の存在が示され、このような地下水流動を生じさせる地質構造の存在が示唆されている(別冊資料集参照)。