2−1−2 調査の方針

以上のような「別府−万年山断層帯」の性格を踏まえると、本地域における活断層調査では、以下の方針での検討が必要と考えた。

@ 「別府−島原地溝」の大構造およびそのテクトニクスとの関連を念頭におき、断層帯の性格を検討する(地溝を形成したテクトニクスと断層の変位センスの関係、火山や基盤の構造境界と断層の位置の関係など)。

A 火山層序について十分な検討を行う。また、場合によっては、火山活動と断層活動の関連についても検討する。

本地域では、露頭で活断層が確認された例は少ないが、火山山麓斜面などで黒ボク土や火山灰が堆積している地域では、小トレンチやピット等の方法で、断層活動と火山灰層序の関係を検討することにより、断層の活動履歴を明らかにできる可能性が高いと考えられる。

B 本断層帯を構成する陸上の活断層群と海域の活断層群の関係および大分平野に伏在すると推定されている断層の有無と本断層帯の関係について検討する。

C 個々の断層の性格を踏まえて、位置・変位センス・活動履歴からみた各断層の共通性および差異に基づき、活断層をグルーピングし、同じ地震活動歴を有する一つの「地震系列」(岡村ほか,1987)ないしセグメントとして評価できるかどうかを検討する。

D 地震防災上重要な新しい時代の断層活動(特に先史〜歴史時代以降の活動)の可能性について検討する。

E @〜Dの検討を踏まえて、本断層帯の活断層を特徴づける活動性評価のパラメーターを設定し、地震防災上の基礎資料とする。

これらの点について確実に評価するためには、最終的にはトレンチ調査やボーリング調査、物理探査(反射法弾性波探査など)等による断層評価が必要である。

今年度は、断層帯の全体像を把握することと、同時に、次年度以降にこれらの詳細調査を行うための地点選定・方法選定を目的とした調査であるが、対象となる地域が広く、かつ、断層数が多いので、次年度以降の調査を有効に行うためには各断層の位置・性状・活動性・断層群としての性格づけなどについて、今年度調査でできるだけ詳細な資料を得ることが必要であると考えた。