2−1−1 「断層帯」の性格

今回調査対象とする「別府−万年山断層帯」(松田,1990)は、中央構造線活断層系の九州への入口にあたるが、同時に、いわゆる「別府−島原地溝」(松本,1979など)の東部にあたり、活断層が密集するいくつかの地溝から構成されている。

これらの地溝は、千田・加藤(1994)では、別府湾地溝・由布院地溝等と呼ばれている。

松田(1990)では、本断層帯は日本の「主要起震断層」の一つとされている。また、松田(1995)では、本断層帯は、日本列島のように大局的に圧縮されている場所の中でここだけに短い正断層が密集しているという特異性を有している地域と位置づけられている。そして、この地域に火山が多いこと、マグニチュード6級の中規模地震がよく起こることとの関連が指摘されている。

既往の研究結果から、このような点を含む、本断層帯とその周辺の活断層に関連する知見をまとめると概ね次のようになる。

今回調査対象とする「別府−万年山断層帯」(松田,1990)は、中央構造線活断層系の九州への入口にあたるが、同時に、いわゆる「別府−島原地溝」(松本,1979など)の東部にあたり、活断層が密集するいくつかの地溝から構成されている。

これらの地溝は、千田・加藤(1994)では、別府湾地溝・由布院地溝等と呼ばれている。

松田(1990)では、本断層帯は日本の「主要起震断層」の一つとされている。また、松田(1995)では、本断層帯は、日本列島のように大局的に圧縮されている場所の中でここだけに短い正断層が密集しているという特異性を有している地域と位置づけられている。そして、この地域に火山が多いこと、マグニチュード6級の中規模地震がよく起こることとの関連が指摘されている。

既往の研究結果から、このような点を含む、本断層帯とその周辺の活断層に関連する知見をまとめると概ね次のようになる。

@「別府−島原地溝」の大構造

「別府−島原地溝」は、新第三紀〜第四紀に活発な火山活動で特徴づけられている(松本,1979)。また、この地域は重力の低異常帯であり、全体的に基盤岩の深度が1〜4qと深く(駒沢・鎌田,1985)、これを小区分する個々の地溝はまた一つ一つが、重力基盤の局所的凹部として認定できること(楠本ほか,1996)が示されている。測地学的観測からは南北方向の引張応力場にあること(多田,1984・1985)で示されている。

これらの特徴は、本地域に正断層が密集していることと整合的であるが、同時に個々の地溝の形成については、中央構造線の横ずれ運動との関係が示唆されており(楠本ほか,1996)、広域的なテクトニクスと活断層との関係については、未解明の部分が多い。

A陸上部の断層と火山噴出物との関係

上記の地溝内部および周辺には、火山活動によって形成された地層が広く分布しており(星住ほか,1987など)、調査地西部の山地では、第四紀火山山体の変形から活断層が認定されている場合が多い。ただし、活断層露頭が確認された例は少ない。

B陸上部の断層の性格

本断層帯を構成する個々の断層は、延長方向がほとんど東西性を示しており、長さは全般に短く(5q以下が多い)、これらが断続的に連なるように集合して東西方向にのびる各地溝の北縁ないし南縁を形作っている。

主な断層は、地域の北縁では、別府北・鹿鳴越等の断層(東方海域では別府湾中央断層)、南縁では、湯布院・堀田・朝見川等の断層である。北縁側と南縁側の断層群を一体としてみた場合、断層の長さは30〜40qに達するとみなすこともできる(九州活構造研究会,1989、活断層研究会,1991等の資料による)。

これらの断層は、多くが正断層で縦ずれ変位が卓越しており、地溝の北半部では南落ち、南半部では北落ちで、地溝内部に向かって落ちている。断層崖の規模は数m〜数10mのものが多い(九州活構造研究会,1989、活断層研究会,1991等の資料による)。

C別府湾内の断層

本断層帯の東方延長にあたる別府湾内では、音波探査によって、海底下4000mに達する基盤の地質構造が解明されており、海底面付近に達する断層の存在が指摘されている(由佐ほか,1992)。特に湾の北半部では、前記の陸上部の断層と同走向で、長さの短い断層が多く認められており(島崎ほか,1990、岡村ほか,1992、岡村ほか,1996など)、「別府湾海底断層群」(活断層研究会,1991)と一括されている。

D大分平野下の伏在断層

本断層帯南縁の朝見川断層の東方にあたる大分平野部において、首藤・日高(1971)は、ボーリング資料をもとに沖積層の地質構造を解析し、阿蘇−4火山灰層が海側へ大きく落ち込む位置に「別府湾南岸断層」の存在を指摘している。

その後、千田(1987)は、沖積面基底の海側への落ち込みは、海水面低下期の浸食によって形成されたものと判断したが、最近の田中ほか(1998)は、大野川河口で、ボーリング資料の解析から、傾斜62゜に達する海側落ちの構造を抽出し、この構造を断層と考えている。吉岡ほか(1997)には、このような沖積層の深度の不連続線が図示されている。

首藤・日高(1971)によると、この「断層」は、朝見川断層と同じく東西性の走向・北落ちの変位を示すとされており、朝見川断層と何らかの関係があると考えられている。

E断層の活動性

本断層帯および周辺には、活動性の高い断層(活断層研究会,1991の基準でA〜B級)が多く、いくつかの断層については、6,300年前に噴出した鬼界−アカホヤ火山灰が断層変位を受けていることが認められている(千田,1995、岡村ほか,1992、星住ほか,1987、村井・松田,1975)。

また、本断層帯および周辺では、1596年の別府湾の地震(瓜生島水没の伝承)、1975年の大分県中部地震など、歴史時代にも地震活動を生じており、前者については、別府湾内の活断層の活動によると推定されている(岡村ほか,1987)。

以上のように本断層帯および周辺地域の活断層には、火山活動との関連、正断層性で密集していること、一般に活動度が高く、新しい地質時代にも活動している、といった特徴がある。

一方、日本における従来の活断層評価は、逆断層もしくは横ずれ断層についての知見をもとにしており、本地域にみられるような正断層について、同じような断層評価ができるかどうかは必ずしも明らかではないように思われる。この点に関連して、岡村ほか(1987)は、別府湾内の正断層群について、同じ地震活動歴を有する断層群を一つのグループとみる「地震系列」という概念を提案し、この断層群が複数の「地震系列」から成るとしている。