2−7 万年山地域

今回の調査により、万年山地域には、台地を形成している溶岩類の他に、万年山火山起源とみられる火砕流堆積物が広く分布していることが明らかになった。今回の調査では、この知見をもとに万年山地域の火山層序を見直した(2章参照)。以下、これらの溶岩流や火砕流の堆積物、Aso−4火砕流堆積物などを変位基準として、断層の活動性について検討した結果をまとめる。

地形的な断層評価

既往文献データをもとにした、本地域の断層についての地形的な評価を表7−1−1表7−1−2にまとめた。今回実施した空中写真判読結果を付図2に、国土計画基本図ないし森林基本図(縮尺1/5,000)から作成した主要部分の地形断面を図7−1図7−2に示す。

〇変位地形

調査地域の北部から中央部にかけて、35万年前に噴出した万年山溶岩が広く分布し、平坦な溶岩台地を形成している。南部には、亀石山溶岩(42万年前)から成る山体が東西方向に延び、北西部には五馬市溶岩(85万年前)から成る台地が広がっている。

本地域では、これらの溶岩台地上に東西方向の断層崖が連続する。地域の北部(秋畑西断層以北)の断層は、南落ちのものが主であり、断層崖の比高が最も大きい断層は、最北縁の北西−南東方向に延びる万年山断層である。地域南部(秋畑断層以南)の断層は、北落ちのものを主とし、断層崖の比高が最も大きいものは、南縁に近い亀石山断層である(後述)。これらの変位の向きの異なる2組の断層群により、東西方向に延びる地溝が形成されている。この地溝は、南北の幅が約8km、東西方向では約15kmである。

平成14年度に実施した空中写真判読では、既往文献に示されている断層以外の新たな断層は見出せなかった。また、新しい地形面を変位させているとみられる断層は、五馬市、一手野−万年山、吉武山断層などのごく一部のものに限られていた。これらの断層では、中位段丘面以後に形成されたと推定される地形面上に断層崖とみられる段差地形を認定したものの、五馬市、一手野−万年山断層で実施した調査(露頭剥ぎ、トレンチなど)では、新しい時代の断層活動を示す地質的な証拠は得られなかった(後述、吉武山断層については、今年度に詳細調査を実施)。

〇断層の変位量

各断層崖の比高から、基盤の変位量が推定できる。地形断面から火山体斜面を復元して、同一地形面のずれから各断層による基盤の変位量を求めると表7−2のようになる。既往文献、今回読み取った値は、共に、万年山断層で最も大きく、300mに達する。その次は、亀石山断層の100m程度の値である。基盤の変位量からみると、この2つの断層が、本地域の地溝のそれぞれ北縁と南縁を成しているようにみえる。その他の断層でも、変位量が数10mないしそれ以上に達するものがある。

以上の地形的な断層評価は、本章末の一覧表(表7−7)にまとめた。以下、代表的な断層の状況について、次の3地域に区分して記述する(次章の断層帯区分とは対応しない)。

・万年山地域主部(五馬市−塚田付近)

谷底低地が広く、変位基準となる地層の分布が期待された。

・万年山地溝北縁(万年山−一手野−花香付近)

万年山断層の断層崖から続く南落ちの断層群、地溝北縁を形づくる。

・万年山地溝南縁(菅原−麻生釣―宇土谷―亀石山)

亀石山断層の断層崖から続く北落ちの断層群、地溝南縁を形づくる。

表7−1−1 既往文献データにもとづく断層評価一覧表(万年山地域−1)

表7−1−2 既往文献データにもとづく断層評価一覧表(万年山地域−2)

表7−2 断層による基盤の変位量