(3)川底断層

吉武山断層の北側に位置する。北落ちの断層である(図7−16)。断層の東部では、万年山溶岩を変位させていおり、比高数10mの断層崖がみられる。一方、この断層の西方延長部は、万年山溶岩と亀石山溶岩の分布境界となっている。この部分は、地形的には断層とは認定できないが、万年山溶岩が噴出した際に、亀石山溶岩を変位させた断層崖がすでに存在し、万年山溶岩の分布を規制するバリアーとなっていた可能性が考えられる。この想定が妥当であれば、この断層は、過去に少なくとも2回は活動したと考えられることになる。このように累積的な活動が示唆される断層は、本地域では他にはみられない。この断層の断層崖を横断してトレンチ調査を実施した(図7−21図7−22)。

図7−21 川底断層トレンチ:地形平面図

<トレンチ調査結果>

〇地質構成

トレンチでは、万年山火砕流堆積物とそれを覆うKj−P1、AT火山灰を挟むローム層が確認された(図7−23−1図7−23−2表7−5表7−6)。ローム層中には、Kj−P1とAT火山灰の間に、旧表土に挟まれて礫質の堆積物が出現した。この堆積物は、岩質的にはほぼ均一で、安山岩質の粒子を主体とする。ほぼ塊状で堆積構造は認定しがたい(下部から上部に向かって、シルト質→砂質→シルト質という変化を示すこともある)。わずかに含まれる火山ガラスは、形態や屈折率が、万年山火砕流堆積物ときわめて類似している(表7−5)。この地点の西方約3km(山田牧場進入路;前出)でも、同じ層準に同様の堆積物がみられる(図7−24)。このような分布と産状からみて、この堆積物は、トレンチ地点付近に局所的に分布する堆積物ではなく、万年山地域にある程度の範囲で分布する、火砕流堆積物であると判断される。

〇断層の活動性

地形からみた基盤の溶岩(万年山安山岩;35万年前)の変位量は約40m、上下方向の平均変位速度は、0.11m/千年となる。活動度はB級(下限)である。しかしながら、トレンチでは、万年山火砕流以後の地層には、断層による変位は認められなかった。このことからみると、この断層は、万年山溶岩を変位させているものの、それ以後はほとんど活動していないことになる※。 

※2章に示したたように万年山溶岩と火砕流の噴出時期は、複数回であったと推定される。また、ここに出現した火砕流堆積物は、層序からみて、万年山火山噴出物中でも、最も新しい時期のものと推定される。したがって、周辺に分布する溶岩とこの火砕流堆積物は、数万年ないしそれ以上のオーダーで時代が異なる可能性が考えられる。

以上の調査結果をもとに、万年山地域の活断層評価を表7−7にとりまとめた。

表7−2−1 断層評価一覧表(万年山地域−1)

表7−2−2 断層評価一覧表(万年山地域−2)