この断層は、当地域内で地形的に最も明瞭である。地形判読段階では、断層の落ち側に”沖積低地“様の平坦面が広がり、かつ、”低位段丘面”様の面が変位していることから、かなり新しい時代に断層活動があったと推定された。
しかしながら、平成14年度の調査では、人力掘削により、”低位段丘面”様の面の直下には、上記の万年山火砕流堆積物のメンバーと考えられる地層が分布していることが確認された。周辺を含めたこの堆積物の分布には、断層によると考えられるずれは確認できなかった。また、五馬市断層の断層崖が”沖積低地”に接する位置で露頭剥ぎとハンドオーガーボーリングによる地層追跡を実施したところ、断層崖と考えた崖の位置では万年山溶岩中にはせん断面は確認できず、落ち側の平坦面の直下には、Aso−4火砕流のメンバーである、鳥栖オレンジ火砕流堆積物が出現した。このような地質状況からみて、この断層は、阿蘇−4火砕流堆積物の堆積以後は、活動していない可能性が高いと判断した(図7−5)。
図7−6 五馬市断層の断層崖付近の地質分布(露頭剥ぎ、ハンドオーガーボーリング結果)