地形的に追跡できる断層の長さは、約4.5kmである。走向は、西部で西北西−東南東で、東に向かって、東西走向、さらに北東−南西走向に変化する。全体に大きく南へ凸状に張り出している。
<トレンチ調査結果>
この断層では、新しい地形面との関係が把握できる地点が見出せなかったため、扇山集落西方の断層崖の東端に近い位置で、断層崖を直接掘削するトレンチ調査を実施した。この付近では、この断層と地溝北縁の南落ち断層のメンバーである扇山断層が近接しており、今回選定した地点は、昨年度実施した扇山断層でのトレンチ調査地点の南西約400mの地点である(図5−7)。
トレンチは、断層が通過すると推定された地形の傾斜変換点の位置を横断し、地表からの深さ3〜3.5mまで掘削した(図5−8)。確認された地層は、厚い黒ボク土層とその下位のローム層である。黒ボク層は、橙色スコリア層、九重A火山灰層、K−Ah火山灰層を挟み、ローム層最上部には、AT火山灰由来のガラスが濃集している。
このトレンチでは、AT火山灰以降の層準に明瞭な変位を与えている断層は確認できなかった(図5−9、図5−10)。他地点の調査結果と同様に考えると、この断層では、AT火山灰層準以後に、地層に明瞭な変位を与えるような断層活動は生じていないと判断される。