地形的に追跡できる断層の長さは、約3.4kmである。走向は、全体に西北西−東南東で、東部では、崩平山6断層に乗り移り、雁行状の配列を示すようにみえる。
<トレンチ調査結果>
この断層の東部では、空中写真判読により、火山麓扇状地上に比高2m以下の北落ち低断層崖がみられた(図5−3)。当初は、この崖の位置でトレンチ掘削を検討したが、沢の開析により、現在は地形が不明瞭になっていること、掘削機械の搬入方法がないこと等により、この地点での調査は断念し、代替え地点として、断層の東端付近での調査を検討した。この地点では、空中写真で地形を判読すると、南傾斜の扇状地面の途中で、傾斜が緩くなっている(図5−4)。
この傾斜変換点付近を挟む延長90mの区間で、ハンドオーガーによる群列ボーリングを実施したところ、ローム層上部以浅の表層部の地層は、おおむね斜面に沿った地質分布を示し、断層によるとみられる地質分布の不連続※は確認できなかった。唯一、斜面の途中で地質分布がやや不連続になる地点を見出したので、確認のために、この地点でトレンチ調査を実施した(図5−4)。
トレンチは、地質分布の不連続地点を挟んで、地表からの深さ3〜3.5mまで掘削した。確認された地層は、厚い黒ボク土層とその下位のローム層、扇状地堆積物と考えられるローム質砂礫である。黒ボク層は、橙色スコリア層、九重A火山灰層、K−Ah火山灰層を挟み、ローム層最上部には、AT火山灰由来のガラスが濃集している。
このトレンチでは、扇状地堆積物中に数条の亀裂がみられたものの、AT火山灰以降の層準に明瞭な変位を与えている断層は確認できなかった(図5−5、図5−6)。他地点の調査結果と同様に考えると、この断層では、AT火山灰層準以後に、地層に明瞭な変位を与えるような断層活動は生じていないと判断される。