2−5−1 千町無田周辺の地形・地質構成

千町無田低地周辺地域の地形とその構成地質は、次のとおりである(付図3参照)。

・北方の山地 :34万年前に噴出した溶岩から構成されている崩平山火山体の南側斜面にあたる。斜面上部は、溶岩類から成る急傾斜の斜面で、斜面下部は、山麓扇状地である。扇状地斜面の原形を形作っている扇状地礫層は、Aso−4火砕流以後の火山灰を挟むローム層に覆われており、10万年以上前の堆積物と推定される。平成14年度に実施した沖積低地を南北方向に横断する反射法弾性波探査結果からみて、この堆積物は、現在地表にみられる斜面傾斜を保ったまま、少なくとも低地の中心付近まで分布していると推定される。

・西方の丘陵地 :38万年前に噴出した朝日台溶岩から構成されている。開析が進み東西方向の直線状の谷が発達している。

・東方の山地 :55万年前に噴出した溶岩から構成されている花牟礼山の山体の西部にあたる。

・南方の台地 :鳴子川左岸には、九重火山に由来する飯田火砕流堆積物(4.8万年前)が広範囲に分布し、この堆積物を開析して河川(鳴子川・黒子川)が北ないし西へ流下している。飯田火砕流堆積物の堆積面は段丘化しており、現在の河床から最大比高約15mの面を形成している(段丘面T)。千町無田低地の西縁付近では、飯田火砕流堆積物が開析された面及び飯田火砕流より新しい「松の台岩屑なだれ」の堆積物が、一段低い段丘面(それぞれ段丘面Ua、Ub)を形成している。

なお、須久保集落東方には、低地内に孤立して台地が存在する。台地上面から掘進したハンドオーガーボーリング(m−5地点)により、構成層は飯田火砕流であることが確認された。この台地の低地からの比高は約10mで、鳴子川左岸の飯田火砕流堆積物の堆積面と同程度であり、この堆積面の延長部とみなすことができる。

・沖積低地 :千町無田は、これらに囲まれる東西約3km南北約1kmの平坦な低地である。現在の地形は、戦後の耕地整備後のものであるが、1940年代後半に米軍によって撮影された空中写真でも、ほとんど起伏のない平らな地形である。全体に北ないし西へ傾斜しているが、勾配は、5/1000程度でかなり緩い。今回の調査及び既往調査で沖積低地の基盤まで達するボーリングが掘進され、地質構成が明らかになった(詳細は後述)。