以下、調査結果をもとに、調査地域の地形と活断層分布についてまとめる。個々の断層の地形的な評価については、次章以降で断層毎に記載する。
調査地域の地形
接峰面図に示された地形は、基盤地質に対応した次のような特徴を示す。
・野稲岳、崩平山、涌蓋山は、それぞれ溶岩円頂丘から成る独立した火山体として認定できる。図2−3−8の南縁部に示されている九重火山の溶岩円頂丘と溶岩流と比較すると、これらの火山は、おおむね九重火山を構成する各火山体と同程度の規模である。鹿伏岳、花牟礼山も、上の3つの山体ほど明瞭な形態は示さないが、類似した地形を形成している。調査地域の東部は、これらの火山体の集合した地域と特徴付けられる。
・崩平山と涌蓋山の間には、北へ傾斜する緩斜面が広がる。これは、飯田火砕流堆積物の分布域にあたる。
・調査地域の西部では、亀石山、吉武山は、東部と同様の溶岩円頂丘から成る火山としての特徴を示すが、その北側は、万年山山麓付近を除き、全体に等標高線の間隔が大きく、緩く西北西へ傾斜する平坦面となっている。前述した基盤地質との関連でみると、おおむね標高500mより高い面が万年山溶岩の分布域、それより低い面が五馬市溶岩の分布域に対応している。
・西部地域の東端は、町田川沿いに南北に伸びる標高700m以下の低地帯で区切られる。これより東の崩平山との間には、作草の北及び地蔵原の北に、小規模な山体がみられるが、火山体としての形態は不明瞭である。
活断層分布
調査地域には多数の活断層が分布するが、接峰面図で表現されているものは、ごく少なく、次のものだけである。
東部 :立石池−山下池断層、寺床断層、熊の墓断層、崩平山6断層
中央部:地蔵原断層、栃木断層
西部 :万年山断層、塚田牧場断層、亀石山断層、吉武山断層、宇土谷断層、菅原3断層
これらは、基盤の火山体の変位量がかなり大きいものであるが、それでも、接峰面図からも変位地形が読み取れる部分は、断層トレースの一部だけである。唯一、万年山断層でのみ、トレースのかなりの部分が接峰面図にも表現されている。
このような地形的特徴と空中写真で読み取った変位地形の分布から断層を認定した。調査地域は、断層の分布・形態の特徴から、おおまかに、次のように区分できる。
・野稲岳地域(北東部地域)
野稲岳、鹿伏岳の火山体斜面に斜面と逆向きの変位を示す断層崖が認められる。断層の走向は、西北西−東南東から東西ないし東北東−西南西で、火山体の山頂付近を中心に北側斜面では北に凸、南側斜面では南に凸の形態を示す。北部では南落ち、南部では北落ちであり、全体として地溝状の形態を示すが、南部の北落ち断層は、数が少なく、変位量も小さい。
個々の断層の長さは、最大でも2km程度である。鹿伏岳付近の断層が西方の町田牧場付近まで延びる可能性も考えらるが、地形表現は明瞭ではない。
・崩平山地域(東部地域)
崩平山の火山体斜面に斜面と逆向きの変位を示す断層崖が認められる。断層の走向は、西北西−東南東から東西ないし東北東−西南西で、火山の山頂付近を中心に北側斜面では北に凸、南側斜面では南に凸の形態を示す。北部では南落ち、南部では北落ちであり、全体として地溝状の形態を示す。地形的からみた変位量は、北縁の寺床。熊の墓、立石池−山下池、南縁の崩平山6の各断層で大きい。
個々の断層の長さは、最大でも5km以下である。地溝全体の長さとしても6km程度である。山下池付近の断層の東南方延長が直野内山付近まで延びるとすると、長さは10km程度であるが、地形表現は明瞭ではない。
・万年山地域(西部地域)
万年山−五馬市−亀石山地域に分布する溶岩の作る平坦面(溶岩台地)を変位させている多くの断層が認められている。断層の走向は、東西に近く、やや西北西−東南東にふれる。変位の向きは、地域北半部で南落ち、南半部でおおむね北落ちで、全体として地溝状の形態を成している。地形的からみた変位量は、北縁の万年山、南縁の亀石山、吉武山、宇土谷、菅原3の各断層で大きい。
個々の断層の長さは、最大6.5kmであるが、地溝全体の長さとしては15kmに達する。地溝南縁の断層は、麻生釣、菅原付近まで追跡でき、さらに町田牧場の南方まで延びる。
・町田牧場−地蔵原地域(中央部)
南落ちの断層が卓越しており、それに対する北落ちの断層が明確ではなく、地溝の形態は認められない。各断層の長さは、2〜5.4kmと比較的長い。地形的からみた変位量は、栃木、地蔵原の両断層で大きい。