1−3−1 トレンチ調査

本調査は、平成14年度調査で明らかになった調査地域内の主要活断層について、詳細な活動履歴(最新の活動時期・活動間隔・1回の変位量など)を明らかにする目的で実施した。

a.調査地点の選定

平成14年度の調査結果及び今年度の調査の進捗をふまえ、次の断層を対象とした。

・東側(野稲岳−崩平山測線)

水分・熊ノ墓・崩平山2−北方・崩平山7・崩平山6・高柳(新称)の各断層

・西側(万年山−亀石山測線)

川底・菅原2の各断層

                        (計 8断層)  

詳細な位置は、ボーリング調査の結果なども参考にして現地条件等も考慮して選定し、大分県地域活断層調査研究委員会(以下、委員会と略す)の承認を得た。また、 掘削に先立って、土地所有者から掘削の承認を得た。

b.トレンチの掘削

トレンチは、深さ3〜5m、長さ5〜10m程度とした。トレンチの形状や深さ、

掘削面の勾配、排水仮設などの詳細は、調査目的と地盤強度からみた掘削面の安定性や地下水の状況、用地条件等を考慮して決定し、調査作業中の安全が確保できるように設定した。

掘削に際して発生する土砂や湧水などに対しては、周辺環境に悪影響を及ぼさないように充分配慮して、仮置きや排水処理を行った。写真1

c.掘削面の地質観察

トレンチ掘削面の地質観察等は、以下の要領で行った。

・掘削面を詳細に観察し、縮尺1/20程度のスケッチ図として記録し、掘削面や トレンチ毎にまとめた。

・スケッチには、所定の縮尺で表現できる最小限度の地層単元まで区分して表現し、地層の構成物、堆積構造、含まれる動植物の遺体(化石)や考古遺物、変形構造、断層や亀裂、風化程度、色調などについて表現した。

・また、層理面や不整合面と断層の切り合いないし被覆の関係、層準による変形程度の違い、地層の層相変化などをもとに、断層活動の生じた層準を特定し、その位置をスケッチに表現した。

・スケッチ記録や試料分析結果をもとに地層の年代や断層活動の層準を書き入れた解釈図を作成した。

・観察した掘削面について、スケッチ図に対応したカラー写真の撮影を行った。

d.分析用試料採取

地質観察結果をもとに、地層の対比や断層活動の時代を決定するのに有効な次のような試料を選定し、トレンチ掘削面から採取した。

・14C年代測定用試料 :動植物遺体(化石)、腐植土など

・テフラ試料  :トレンチ内で発見された火山灰・軽石・スコリア・火砕流など

・考古遺物 :トレンチ内で発見されたすべての遺物

・その他必要と考えられる試料

採取した試料は直ちに密封し、汚染・混合・変質等を防ぐ措置を施した上で分析に供した。

e.測量

トレンチ付近の地盤や掘削面底盤の標高を三等水準測量程度の精度で測量した。また、トレンチ及び周辺部の平板測量を行い、水準測量結果とあわせて、平面図(縮尺1/100ないし1/200程度)及びトレンチ位置図を作成した。

f.トレンチの委員視察及び一般公開

 トレンチについては、監督員の指示により、委員の視察及び一般公開の期間、トレ ンチを観察できる状態にして維持した。

g.トレンチの埋め戻し

調査終了後は、トレンチ掘削部を埋め戻し、原形に復旧した。埋め戻しは、用土を充分に転圧・締め固めしながら行い、用土が不足する場合は、不足分を補充して、埋め戻し終了後に地盤の沈下や変形が生じないようにした。埋め戻し終了後、地盤が十分に安定したことを確認し、監督員の確認を得た上で、土地所有者から復旧完了の承認を得た。