一方、万年山地域東部の万年山断層についてみると、万年山山麓では広く礫質の扇状地堆積物が分布するため、活動性評価のための調査は困難と判断される(図4−2−41)。山浦川を横断する位置付近では、万年山断層の直接の延長方向である北西方向(花香断層に向かう方向)へはリニアメントの位置が不明瞭になり、地形的には、むしろ西方の一手野集落の方向に延びるようにみえる。よって、ここでは、一手野断層と合わせて、一手野−万年山断層として扱う。
この断層が山浦川を横断する位置を挟んで下流(北)側では、Aso−4火砕流堆積物のつくる面の高度が、上流(南)側より高くなっている(図4−2−42−1、図4−2−42−2)。これは、北上りの断層活動によって生じた変位である可能性がある。この断層より南側の末野断層を挟む両側では、Aso−4火砕流の堆積物がつくる面の高度に変化はみられない。このことからみると、末野断層は、Aso−4以後には活動していない可能性が高いようである。
また、一手野−万年山断層のリニアメントの延長部が、山浦川を横断する位置では、米軍撮影の古い空中写真で低位段丘面上に南落ちの段差が認められる(図4−2−42−1、図4−2−42−2)。この段差は、現在では人工的な改変で確認できないが、現地での聞きこみで、かつてそのような段差が存在していたことは確認できた。もし、この段差が北上りの断層活動によって生じたものであるならば、上記のAso−4分布の不連続と合わせて考えると、Aso−4以後の新しい時代に断層活動があったことになる。
この点を確認するために、この段差があった地点においてトレンチ調査を実施した(図4−2−43、図4−2−44−1、図4−2−44−2、図4−2−44−3、図4−2−44−4、図4−2−44−5)。その結果、この段差に相当する位置では、段丘面の構成層を変位させている明瞭な断層は確認できず、この面の形成以後に断層活動が生じた可能性は低いと判断された。当初段丘面上の変位地形と想定した地形的な段差は、側方の谷からもたらされた巨礫が谷の狭隘な部分でトラップされた結果生じたものである可能性が高い。