1975年の大分県中部地震の震央付近にあたる扇山地区では、当時の構造物の変形が現在も確認できる(図4−2−10)。この位置は、扇山断層の東方延長部にあたる。当時の変状が残っている段丘面上の畑で露頭剥ぎ調査を行なったところ、耕作土下位の水田床土とみられる赤色土層(K−Ah火山灰から成る)の上面に、新しいクラック群が見出された。クラックの一部は、1〜2cm程度の上下方向の変位を伴っている。これらのクラックは、地表の構造物に生じた変状の延びの方向(おおむねN40W)への左横ずれのせん断によって形成されたと考えられる。これは、前述した大分県中部地震の発震機構と一致する。また、変状の延びの方向は、扇山断層の走向におおむね一致する(図4−2−11−1、図4−2−11−2、図4−2−11−3)。
このことから、扇山断層が大分県中部地震で活動した可能性が想定されたので、その確認と大分県中部地震に先行する断層活動を把握するために、扇山集落西方の牧草地内で、断層の落ち側に沖積低地が形成されている位置付近でトレンチ調査を実施した(図4−2−12−1、図4−2−12−2)。トレンチ調査の結果、断層のリニアメント付近では、AT火山灰やK−Ah火山灰には、明瞭なせん断面を伴うような10cm以上に達する上下方向の変位は確認できなかった。ただし、K−Ah火山灰層やその上位のA1火山灰層まで、微小ではあるが撓曲的な変形をしている可能性は残っている(図4−2−13−1、図4−2−13−2、図4−2−14−1、図4−2−14−2、図4−2−15−1、図4−2−15−2)。
ゴルフ場南縁−田伏断層については、文献調査の項で述べたように南東方向へ連続する可能性が考えられる。地形的には追跡は難しいが、想定される延長部付近で花牟礼山溶岩を変位させている断層を見出した(図4−2−16)。