4−2−2 野稲岳地域

野稲岳の火山体(31万〜42万年前に形成)の変形から断層の存在が認められる。斜面に対する逆向きの断層崖が明瞭である。山頂より北側の断層は北へ凸に湾曲し南落ち、南側の断層は南へ凸に湾曲し、北落ちである。

最も北に位置する水分断層は、北東−南西走向の南落ちで、落ち側に断層運動による谷の閉塞で形成された可能性のある沖積低地がみられる(図4−2−5−1図4−2−5−2)。西方延長部では、野上川の河岸段丘(低位)上に、上流がわ落ちの(逆向き)断層崖の可能性がある段差が認められるが、この位置を挟んで地質分布が不連続かどうかは確認できておらず、Aso−4火砕流堆積物が浸食された面上の段差である可能性も考えられる(図4−2−6)。他の断層では、火山体本体内には新しい活動を示す変位地形は認められない。

一方、西方の野上川両岸に分布する火砕流堆積物の堆積面と考えられる新しい地形面(野稲岳火山より新しいが、時代の詳細は不明)上に、いくつかの低断層崖が認められる。野稲岳山体に認められる断層の少なくとも一部は、これらの断層につながるようにみえる(図4−2−5−1図4−2−5−2)。

今回の調査では、鹿伏断層と滝上南断層の断層崖で露頭剥ぎを実施した。いずれの断層でも、リニアメント付近で、通常の斜面変動で生じたとは考えにくい地層の変形構造を見出したが、明瞭な断層は確認できていない(図4−2−7−1図4−2−7−2図4−2−8−1図4−2−8−2図4−2−8−3図4−2−8−4)。今回見出された変形構造が、断層活動の何らかの反映であるとすると、両断層の活動は、K−Ah火山灰以後は、生じていないと考えられるが、最終的には平成15年度に予定されているトレンチ調査(水分断層の落ち側でやや広い沖積低地が形成されている箇所で計画)等をふまえて評価することとしたい。