これらの火山に由来する分布の新しい時代に噴出した分布範囲の狭い火山灰も確認できる(鎌田,1997;1/5万地質図幅「宮原」など;図4−2−2)。今回の調査では、活断層の評価に用いる変位基準面設定の基礎資料を得るために、あらためて、既往文献資料に記載されている火山灰層の確認と区分基準の設定を行った。
〇調査結果
代表的な火山灰について、露頭で確認した層相と各火山灰中の火山ガラスの屈折率、鏡下での特徴をまとめた(図4−2−3−1、図4−2−3−2、図4−2−4−1、図4−2−4−2)。各試料の分析結果のデータシートは、巻末資料に収録した。
・K−Ah火山灰層やAT火山灰層、Aso−4火砕流堆積物(火山灰)は、調査地域のほぼ全域で確認される。これら(特に前2者)は、火山ガラスの保存がよく、露頭でも明瞭に識別できる。
・崩平山地域では、K−Ah火山灰より上位の少なくとも2層準に、九重火山由来と推定される火山灰層が肉眼で識別できる。これらのうち、下位の層は、九重火山由来のA1−8火山灰層(鎌田,1997)に相当し、上位の層は、阿蘇火山N2期の火山灰に相当すると判断される。
・九重火山由来の代表的な火山灰層である九重第一降下軽石層(Kj−P1)は、特徴的な層相(上部は軽石層、下部は青灰色の火山砂)を示し、調査地域全域で確認できる。
・今回の調査では、万年山地域においてKj−P1より古い未記載の火山灰や火砕流(”不明火砕流”)堆積物を新たに複数確認した。これらについて、岩石学的検討、層序・年代の検討を行い、その分布を把握した。これらの堆積物は、断層評価上で有効な変位基準面として用いることができる(詳細は後述)。
・万年山地域では、変位基準面として用いるために、基盤の火山岩類についても年代測定を実施して年代値データを得た(五馬市デイサイト溶岩:85万年前、亀石山デイサイト溶岩:34万年前)(詳細は後述)。