「別府−島原地溝」は、重力の低異常帯であり、全体的に基盤岩の深度が1〜4qと深く(駒沢・鎌田,1985など)、さらにその中にいくつかの重力基盤の局所的凹部が認定できる。今回の調査地域のほぼ中央には「猪牟田カルデラ」(Kamata,1989)として知られている凹部が存在する。
このような「地溝」の形成について、多田(1984・1985)は、過去1世紀の測地学的観測データをもとに、別府−島原地溝付近は、南北方向の引張応力場にあるとし、沖縄トラフの延長部と考えた。
一方、同じデータの再解析により、Hatanaka and Shimazaki(1987)は、地溝の北部が全体として右横ずれの動きをしていることを示した。また、楠本ほか(1996)は、独自のシミュレーションにより、個々の地溝の形成機構を論じている。これらの結果をもとに、フィリピン海プレートの斜め沈み込みによる中央構造線の右横ずれ運動によって「別府−島原地溝」の形成が論じられている(Ito and Takemura,1993;鎌田,1992;佃,1992,1993など).