(5)変位量と平均変位速度

@ 三佐断層

<大野川地区>

・ステージ5eの堆積物:堆積物上限の比高は、ボーリング(大野川No.3孔)と3号埋立地の既往地質資料(下山ほか、1999)で比べると約50m。平均変位速度は、50m/12万年≒42cm/千年。

・完新世の海成層下面:断層位置を挟むボーリング(大野川右岸地区bS、bT)で比較すると比高は約48m。平均変位速度は、48m/1万年≒4.8m/千年。

・K−Ah 火山灰層:断層位置を挟むボーリングで比較すると、比高は26.5〜30m。平均変位速度は、26.5〜30m/6.3千年≒4.2〜4.8m/千年。

・表層の砂礫層下面:断層を挟むボーリングで比較すると、比高は10〜12m。平均変位速度は、10〜12m/2千〜3千年≒3〜6m/千年。

後期更新世以降というや長い期間についてみると、活動度はB級であるが、少なくとも完新世になってからの活動度はA級と判断される。これは、田中ほか(1998)に述べられた「別府湾南岸断層」の活動度評価と整合的である。

A志村断層

断層を挟む地層の変位量(上下方向)については、以下のような情報が得られている。

<大野川地区>

・ステージ5eの堆積物:海成層上限の比高は、丹生台地北端の露頭(巻末資料参照)とボーリング(大野川bR孔)で比べると約70m。平均変位速度は、70m/12万年≒0.6m/千年。

・完新世の海成層下面:断層位置を挟むボーリング(大野川bPとbR)で比較すると比高は約4.5m、反射断面で追跡すると断層を挟んだ変位量は3m程度。後者の値を採用すると、平均変位速度は、3m/1万年≒0.3m/千年。

・K−Ah 火山灰層:断層位置を挟むボーリングで比較すると、比高は約10m、反射断面で追跡すると断層を挟んだ変位量は1〜2m程度。後者の値を採用すると、平均変位速度は、2m/6.3千年≒0.3m/千年。

・河成砂礫層下面:断層位置を挟むボーリング結果からみて、変位していないと判断される。

B府内断層

<日岡地区>

・ステージ5eの堆積物:断層落ち側の孔(B孔)で、この時代の堆積物が未確認のため、評価できていない。

・完新世の海成層下面:断層位置を挟むボーリング(日岡b`とba)で比較すると比高は約21m。平均変位速度は、21m/1万年≒2.1m/千年。

・K−Ah 火山灰層:断層位置を挟むボーリングで比較すると、比高は約10.5m。平均変位速度は、10.5m/6.3千年≒1.7m/千年。

・河成砂礫層下面:断層を挟むボーリング(日岡b`とba)で比較すると、比高は0.7mである。海成層のように水平性の仮定が成立するかどうか確認できておらず、この程度の勾配は(0.7m/125m≒0.0056)は、堆積時の堆積面の傾斜としても説明できると考えられる。したがって、ここではこの面は変位していないものとして扱う。

<芸術会館地区  ※平成12年度のデータ>

・完新世の海成層下面:断層位置を挟むボーリング(芸術会館bPとbQ)で比較すると比高6.4m。平均変位速度は、6.4m/1万年≒0.6m/千年。

・K−Ah 火山灰層:断層位置を挟むボーリングで比較すると、比高は約4.2m。平均変位速度は、4.2m/6.3千年≒0.7m/千年。

・河成砂礫層下面:断層を挟むボーリングで比べると、変位していないと判断される。

K−Ah火山灰層の変位量は、平成12年度調査では、大分川より西側の府内断層については、12〜16mと評価されている。日岡地区でもこれと同程度であり、最大でA級の活動度を示す断層と考えてよいと思われる。