以下に、各項目の概要を記述する。
@初期編集
データ整理:ノイズ除去、不良データの除去、測量データの整理等を行う。
CMP編集:測定を道路沿いおよび障害物をさけて実施したため、CMP(反射中点)は一般に平面上に分布する。重合測線は、これらCMPの分布を最適に通る折れ線として設定し、この測線沿いにCMP編集を行った。なお、重合測線はオフセット距離(震源―受振器間距離)が比較的短いものを考慮して決めた。
A初期処理
波形処理のうち最も重要な処理は、パルスの短縮、短い周期の多重反射の除去、スペクトルの平滑化、等を目的に実施するデコンボリューションである。この処理を良好にするために、次の前処理を実施した。
・プレフィルタリング
再帰型のフィルターを用い、位相特性は次に述べる位相補償処理で併せてミニマムフェーズに直した。
lowcut:16Hz
highcut:90Hz
・位相補償
デコンボリューションが有効に働くためには、トレースがミニマムフェーズ特性であることが条件のひとつである。測定系でもっともこの条件を満たさないものは探鉱機のフィルターの位相特性である。これをミニマム位相特性にもどすフィルターを設計し、補償を行った。
B振幅補償
次の2段階に分けて実施した。
a. 全トレースよりオフセット距離(震源―受振器間距離)別に振幅の時間減衰特性を統計的に求め、この特性の逆数で振幅補償を行った。
b. 各トレース別に、ゲート幅250msで平均振幅の時間変化を求め、振幅補償を行った。(AAC)
Cデコンボリューション
自己相関演算のゲート長1800ms、フィルター長250ms、ホワイトノイズ3%のタイム・バリアント型ホワイトニング・デコンボリューションを用いた。
D静補正
静補正は、低速度の表層を第2層の速度で置き換え、起振点・受振点が見かけ上基準面に並ぶようにする処理である。この目的は、
(ア) 表層の速度層厚は変化が激しいため、表層を通過する時間は震源・受振点により様々である。これをできるだけ一定にする。
(イ) 表層と第2層との速度差は一般に大きいため、解析上仮定している直線破線から外れる。これを補償する。
(ウ) 震源・受振点の標高差による影響を除去する。
ア)表層静補正
一般的には屈折法により表層をはぎ取る方法が用いられるが、特に、ミラージュ的な速度変化を示すような、速度構造地盤では、必ずしも精度の高い補正値を得られるとは限らない。本調査においては、「屈折トモグラフィ」により表層の速度分布を求め、これにより静補正値を算出し、表層に起因する乱れを補正した。
イ)残留静補正
NMO補正後に最大10msecに制限した自動残留静補正解析を行った。
ウ)CMPアンサンブル内での標高静補正
NMO補正前に、各アンサンブルごとにその平均標高までの標高差補正を行った。なお、補正速度は1550m/secを用いた。
エ)重合後標高補正
時間断面のプロットの際に、地表平均標高(floating datum)から基準標高までを、1550m/sの速度を仮定して標高補正を実施した。
ENMO補正
NMO補正とは、オフセットの違いによる走時のずれをゼロオフセットの記録に補正するものである。通常直線の波線を仮定した下記の方法で行う。
図1−3−1−2に波線の考え方の略図を示す。地下構造が水平2層でオフセットがXのとき、第1層下端から反射して受振点に到達する波の走時は、
t2=4t02+X2/V2
となる。ここで
t0=2Z/V
(V:波の伝播速度 X:震源と受振点の距離 t0=ゼロオフセットの走時)
多層構造の地層の場合も、オフセットXに比べて反射面深度が十分に大きければ、
Tn (X)2=Tn(O)2+X2/VR2
と近似できる。ここでVRはRMS速度と呼ばれるもので
と定義される。
F速度解析
速度解析で得られる速度値は重合速度と呼ばれ、地層がほぼ水平の場合は近似的にRMS速度と等しいとみなされる。速度解析は次の手順で行った。
a.全てのトレースを加算して1本とし、パワーの大きさを求める。
(CVS法:constant velocity scan)
b.狭い時間ゲート内でのトレース間の相関を求める。
(速度スペクトル法)
c. a b の結果を図化し、これを読み取って重合速度を決定。
図中の × はa.で求めたパワー、 ○ はb.で求めたセンブランスである。
印の大きさはパワーあるいはセンブランスの大きさを示している。
読み取り位置は + で示した。
Gミュート・重合
速度解析で得た速度分布を用いてNMO補正し、ミュート後、重合を行った。
Hタイムバリアントフィルター
重合後の時間断面に周波数解析(フィルターテスト)を行い、タイムバリアントフィルターを定めた。決定したフィルターの特性は表1−3−1−1に示した。
Iマイグレーション
重合後時間断面を水平方向の速度分布が均一なストレッチ断面(深度方向には速度変化を認める)に変換した後、波動場補外法(位相移動によるイメージングと下方接続)によるFKマイグレーションを行った。
通常の処理ではこの後、RMS速度により深度変換を実施する。しかし、本調査においては時間断面図において後述するように、測線中の特定の区間において波形の特徴が急変する結果となった。このことから、本調査においては、RMS速度によるよる深度変換不適当であると判断し実施しなかった。