4章での検討をもとに、現在の時点で、地震防災上の意義という点から断層の評価をまとめると、次のようになる。
a. 「かなり活動的な主断層」(活動度A級)および海域の「活動的な断層群」(活動度A〜BH級)については、地震防災上、まず優先して検討対象とすべき断層といえる。
b.陸域の地溝北部〜北縁の断層群は、「やや活動的〜あまり活動的でない」ものであり、その中でも活動性の高いもの(目苅・亀川など)についてみても、活動間隔と最新活動時期の関係からみると、差し迫った危険はないと判断される。その他の、より活動性の低い断層(猫ヶ岩山東など)や活動間隔の長い断層(十文字原断層など)についての差し迫った危険度は、より小さいとみてよい。
しかしながら、繰り返し述べてきたように、断層群の活動が相補的であるとすると、次に活動する断層の特定は困難であるといえよう。このような個々の断層の活動の予測の困難さを考慮すると、これらの断層群も全体として地震防災上、ある程度考慮することが必要と思われる。
c.陸域の地溝北側や日出地域、別府北断層系の西側部分については、活断層として評価する必要はないと判断される。
以上の評価は、あくまで暫定的なものであり、平成12年度の調査の中で、さらに検討をすすめる必要がある。平成12年度以降の調査の課題を以下にまとめる。
(1)主断層の活動性の解明(平成12年度)
@別府湾南岸断層(府内断層)(図5−2)
◎方法としては、推定延長部での浅層反射法探査とボーリング調査がある。
また、断層自体のテクトニクス的な評価のためには、将来さらに深部反射法探査や大深度ボーリングを行うことも必要となることが考えられる。
A別府湾中央断層(図5−3)
◎方法としては、音波探査とピストンコアリングが考えられる。
以上の調査計画を図5−1に示す。
(2)大在沖断層群の存在やテクトニックセッティングから推定される
南側の主断層(中央構造線本体?)の位置・活動性等の解明のための調査
◎大分川東方から大野川にかけての地域での反射法探査(深部・浅部)とボーリング調査
さらに、大分市街地直下に伏在する断層の存在が明らかになったことをふまえ、具体的な都市防災計画策定のための調査・検討(地盤図の作成、マイクロゾーニング、地震計の設置、災害シュミレーション、等)も並行してすすめていく必要があろう。