落ちの方向も南と北が混在するが、局所的に小グラーベンないし小ホルスト状の形態を示す部分もある(飛岳地域や日出沖断層群)。
A断層の長さ・分布: 陸・海域共に長さ10q以上で変位量の大きい断層が主断層として存在する。北側(別府湾中央と別府北)の主断層の周辺に変位の小さい、短い断層(長さ2〜3q以下)が密集する。
南側(地溝南縁)では、別府湾南岸から朝見川・堀田・由布院にかけての断層に対しては、対応するような短い断層群はみられない。海域の大在沖断層群に対応する“隠れた主断層”が存在する可能性があるが、確認はされていない。
分布密度は、海域の方が高いようにみえるが、これは、表層の地質構成や調査密度・方法の相違に帰因している可能性があり、一概には比較できない※。
※海域では、全域の表層を変位基準面となる沖積層がほぼ水平に覆うため、断層が認定しやすい一方、陸域では浸食によってこのような地層が欠如しているか、初生的な傾斜を有するため、断層が認定しにくい。また、海域では、音波探査により地下深部までの地質構造が把握できるが、陸域では、面的な断層把握は、表層の地形・地質の情報のみに依っているという違いも大きい。
B変 位 量: 主断層でのK−Ah火山灰の変位量は、別府北断層系を除き、海・陸共に10〜20mオーダーである。別府北断層系は、前期更新世以前にはかなり活動的であったとみられるが、K−Ah火山灰以降の活動はあまり活発でなく、活断層として活動していない部分もある。
その他の小さい断層では、海域では小さくても1mオーダーであるのに対し、陸域では大きくても1mオーダーで、陸域の方がかなり小さい。また、1回の活動での変位量も海域では小さくても1〜2mであるのに対し、陸域では最大でその程度であり、陸域の方が1オーダーないし半オーダーほど小さい。
C活動間隔: 主断層のK−Ah火山灰以降の活動イベントは、いずれについても未だ充分には解明されていないが、別府北断層系を除き、海・陸共に数100年〜1,000年オーダーの活動間隔と想定される。その他の小さい断層では、海域のものが活動間隔3,000年以下であるのに対して、陸域のものは数千年〜1万年オーダー(以上)と、かなり長いと判断される。
D最新活動時期: 断層群全体をみたときの最新活動は、おそらく別府湾中央断層系(慶長豊後地震)で生じており、その周辺の断層にもこの時に動いたと判断されるものがある。
陸域の活断層の内でも、南側の主断層の少なくとも一部は、歴史時代に動いたと推定されるが、現段階では十分な確証はない。確認されている最も新しい活動年代は、“2,000年BP以後”と評価される。
E陸と海の活断層の関係: 別府湾南岸の断層は、海陸の境界から陸域内へ延びているが、別府湾中央断層の西方延長は、分岐によって不明瞭になり、陸域への延長は確認できない。この断層西方の陸域には別府北断層系が存在するが、K−Ah火山灰以後の活動性は低く、活断層としての直接の延長とは考えられない。同様に、陸域の十文字原−亀川付近の断層群と日出沖断層群を比較しても、活動性は明らかに異なっており、直接連続するとは考えられない。
以上をまとめると、調査精度の問題はあるが、少なくとも得られているデータを見る限り、南側の主断層系を除き、陸域の活断層群は、海域の活断層群に比べて活動性が低く、かつ、相互の関連性は低いと判断される。
別府湾中央断層系と「別府湾南岸断層」の2系統の主断層は、別府湾の最も深い部分をはさんで、北東側と南西側で向かい合っており、K−Ah火山灰層の変位量からみると、最も活動的な部分として対になっているようにみえる。これは、テクトニクスの面からみると、別府−万年山断層帯の南限を画する中央構造線の右横ずれ断層運動によって形成されたとされる別府湾プルアパートベーズンの両側端にあたる。しかしながら、活動時期・活動間隔等についてみると、両者には相違があるようにみえる。この点については、さらに検討が必要である。