2−2 断層の形態・変位センス

この「伏在断層」の形態を、主に大分市内における今回調査および既往ボーリング資料をもとにまとめると次のようになる。

・構造の不連続部を挟んで沖積層中の地層境界の深度は、いずれも大局的に北側へ落ちている。K−Ah火山灰層の変位量は、10m程度、基盤の大分層群ないし硯南層群上面の変位量は20m程度である。

・大分川右岸での反射法探査においても、表層の弾性波速度の分布をみると、比較的速度の大きい層の出現深度が断層の北側では、断層の南側より低くなっており、北落ちの断層変位を示唆している(図2−2参照)。大分層群ないし硯南層群上面の北落ち変位量は、15〜20mと評価される。この値は、ボーリング調査結果と整合的である。

・明瞭な断層面を有する構造としては確認されていない。このため面構造としての走向・傾斜は確定できないが、大局的な走向は上記のようにN70°〜75°Wである。

・群列ボーリング(10〜20m間隔)でのK−Ah火山灰の分布形態をみると、不連続部付近の落ち側(北側)では南落ちのドラッグを、上り側(南側)では北側落ちのドラッグを示す。また、コアにみられる小断層は、K−Ah火山灰の分布標高が最も落ち込む部分の両側のボーリング孔(bP孔、bR孔)に多い。以上の点からみて、この断層は、落ち側にグラーベン構造を有する正断層的な構造である可能性があると判断される。

・このようなドラッグの形態は、別府湾中央断層系付近の地層の変形形態によく似ている。別府湾中央断層系は、構成する断層個々の雁交配列の形態から、左横ずれ運動によって形成されたと考えられているが、変形形態の類似は、この伏在断層も同様の構造運動によって形成された可能性を示唆すると考えられる。

・海域の音波探査では、断層の形態はとらえられていないが、地質分布からみた変位センスは、北落ちである。