地形面の変位量・露頭で確認できた変位量からみると、これらの断層の活動度はいずれもC級である。また、活動時期については、全域で表層の浸食が卓越し火山灰をはじめとする表層堆積物の分布が乏しいという不利な条件もあり解明が難しいが、少なくともK−Ah火山灰以降に活動した証拠は得られていない。
今回の調査では、これらの断層の中でリニアメントが最も明瞭な軒ノ井断層を代表として、トレンチ調査を行った。当初は、北へ流下する河川がリニアメントを横断する位置で平坦面をつくっている場所で、トレンチ調査を行う予定であったが、人工改変が著しいことが判明したため、断層崖そのものの掘削に変更した。
トレンチ掘削の結果、断層は確認できたが、基盤の大分層群上面の変位量は3〜4mと小さく、落ち側の基盤を覆う崖錐性の堆積物の層厚も最大70pと、ごく薄いものであった。この崖錐性堆積物※も断層による変位を受けているが、基盤上面の変位量からみて、活動性はごく低く、活動度C級以下で活動間隔も数万年オーダーと判断した。
この結果からみて、この地域の断層群には、地震防災上重要視すべき断層は在しないと判断される。
※ 崖錐性堆積物に含まれる炭化物の14C年代を測定したところ、70年BPと133年BPという堆積物の層相(しまりや風化の程度)からの判断に比べてかなり若い年代値が得られた。おそらく、新しい炭化物の汚染、若返り等があったものとみられる。よって、これらの値は年代値としては採用していない。