また、BEP99−6では7m付近でおよそ2000年間分の堆積の間隙があるものとみられる他、4m90cmでも小さいハイエイタスがある可能性がある。ここでは断層の相対的隆起側が海側となっており、断層運動の直後には堆積よりも無堆積もしくは削剥の環境に転じていたものと考えられる。
以上のことを考慮しながら、イベント層準を求めた。通常は相対的隆起側と沈降側の2本のコア試料で対比を行ってきたが、今回は現在までに4本の試料で詳細な解析がなされたので、これらを組み合わせて検討した。その結果、全部で5つのイベントが推定された。以下に詳細を示す。
・イベント1 BEP99−4で190−290cmの間。ウエッジ1はこのイベントの上部に存在する。およそ800yBP。
・イベント2 BEP99−4で590−700cm。ウエッジ2に対応。下位で2500yBP程度の値が得られている。上位にはスコリア層があり、この年代が約2000yBPであることからその間の年代値をとると考えられる。ただし、スコリア層堆積時にはまだ完全に埋め戻しがおわっておらず、堆積速度が沈降側でやや速い状態は少し続いている。このイベント時には明らかにこの試料でもっとも顕著な堆積イベントが起こっており、この間の1mほどの堆積物は非常に短期間に堆積したと考えられる。
・イベント3 BEP99−4で700−830cmの間。コア6とコア4の堆積物層の厚さが130cmと80cmと大きく異なることからイベントを設定したが、他に対比面もなく確実性は低い。
・イベント4 BEP99−4で880−980cmの間。コア6ではこれより下の層準は欠如している部分があるので、沈降側のコアのみでイベントを推定した。コア3とコア4では火山灰の層準では70cmの差しかないのに浮石層では1mほどの差があることからイベントの存在を考えた。
・イベント5 BEP99−4で980−1080cmの間。浮石層の下では堆積速度が非常に遅く、対比は難しい。BEP99−4の1080cm付近にみられるアカホヤの再堆積堆積物とみられるピーク(63−125μmの堆積物にみられる)はBEP99−3、1と、断層から離れるにつれて小さくなる。またその30cmほど上位にみられる同じく浮石や岩片などの粗粒堆積物を多く含む層準もBEP99−1では不明瞭となり、ここで断層に近い所とやや遠い所で大きな堆積速度の差があったことを示す。