最新活動時期は6,300年BP以後で、おそらく2,000年〜3,000年BP以前である。活動間隔は、20,000年オーダーと長く、1期の活動での上下方向変位量は、数10p〜1.2mないし3.0〜4.6mと推定されるが、複数のイベントが重なって変位量を大きくみせている可能性がある。
活動度は1回の変位量の評価にもよるが、C級ないし大きくてもB級である。
飛岳5断層の地形・地質調査結果
※平成10年度報告書より転載
1)断層の概要
九州活構造研究会(1989) 活断層研究会(1991)
確 実 度 T T
長 さ(q) 1 1
走 向 WNW WNW
変位の向き S上がり S上がり
変位基準と 若杉岩屑なだれ堆積物(<7.5万年)に 若杉岩屑なだれ堆積物(<7.5万年)に
変 位 量 10mの逆向き低断層崖。 10mの逆向き低断層崖。
平均変位速度 上下方向 >0.13 上下方向 >0.13
(m/千年) 水平方向 − 水平方向 −
活 動 度 B B
2)その他の既往資料
な し
3)空中写真判読結果
・若杉岩屑なだれ堆積物上面にWNW−ESE方向で北落ちの逆向き低断層崖が認められる。変位量は10m程度である。
・白滝川の支流が閉塞され、上流側に段丘(河床からの比高10m程度)が形成されている。
・東方延長部の飛岳火山溶岩分布域は、崩壊が著しいため、変位地形は見られない。西方延長部の立石山火山の新しい火山麓扇状地分布域には変位地形はみられない。
・長さは約 0.9q。
4)地表踏査結果
・白滝川支流を閉塞する地点で断層露頭を見出した。
・上流側には、閉塞時に堆積した堆積物が分布し、本断層はこの堆積物やその中に挟まれる黒ボク土、K−Ah火山灰を変位させている。K−Ah火山灰の変位は1m以上。
・谷の閉塞によって形成された堆積物中には、複数の黒ボク層やAT火山灰と推定される可能性が高い火山灰及びK−Ah火山灰が挟まっており、これらの火山灰の降下時期を挟み、少なくとも2〜3回の(断層による谷の閉塞→沈水域の堆積物形成→離水)のサイクルがあったと推定される。
5)評 価
・若杉岩屑なだれ堆積物の変位量からみた平均変位速度は、上下方向で0.11m/千年以上、活動度はB級の下限程度である。K−Ah火山灰の変位量からみた活動度も同様である。
・断層露頭の状況からみて、最新活動時期は、K−Ah火山灰降下以後と判断される。