トレンチ調査結果
猫ヶ岩山東断層では、断層崖下の遷緩点付近でトレンチ調査を行った。これらの結果は、スケッチ図、写真、試料分析結果として巻末資料にまとめた。調査結果をもとにした活動性評価を図3−3−3に示す。
@断層の位置
断層崖はかなり開析されており、地形的には断層の位置はあまり明確ではないが、遷緩点を挟んで斜面の上下方向に掘削したトレンチで、基盤の石質火砕流堆積物の上面が、急傾斜する地点を見出した。断層面としては、明瞭さに掛けるが、上位の礫混りローム質粘土層や黒ボク土層がこの地点の下方で厚さを増していることからみて、この地点が断層位置にあtると判断した。
なお、トレンチ地点の東側と西側では、地形的に推定される断層の位置がややずれており、掘削地点は両側の断層線の会合位置付近にあたる。このように、断層線のオフセット位置にあたることが、上記のようにトレンチ地点で断層があまり明瞭でない理由とも考えられる※。
A断層の形態・変位センス
上述した基盤上面の急傾斜部の形状から判断される断層の走向・傾斜は、N72W70〜90Nである。この急傾斜部の北側で表層の地層が厚くなっていることからみて、変位センスは北落ちであり、正断層の形態を成している。
B変 位 量
K−Ah火山灰を挟む黒ボク土層および暗灰色の火山灰質粘土は、ほとんど断層による変位を受けていないか、その下位の礫混り粘土層は、分布から診て、1.5m以上北落ちに変位していると判断される。
C活動時期
黒ボク土層下位の火山灰質粘土の下面の年代は、本地点での14C年代測定結果や他地点のデータからみて、約10,000年BPと判断される。この面が断層による変位を受けていないことから、最新活動時期は、10,000年BPより前と判断される。実際に活動した時期は特定できない。
※一方、掘削地点の両側についてみると、東側の斜面では地すべりが生じており、沢による下刻も著しい。また、西側は、演習場内の危険区域にあたる。トレンチ掘削地点の選定にあたっては、これらの条件も考慮した。
D活動間隔、1回の変位量
最新活動の推定年代からみて、活動間隔は10,000年以上と判断される。1回の変位量についてのデータはない。
E平均変位速度、活動度評価
地形面から評価すると、B級の下限程度の活動度となる。トレンチ調査結果からみると、同様にB級の下限程度という評価でも、目苅断層と比べると最近の活動性はより小さいと判断される。
猫ヶ岩山東断層の地形・地質調査結果
※平成10年度報告書より転載
1)断層の概要
九州活構造研究会(1989) 活断層研究会(1991)
確 実 度 T −
長 さ(q) 1.4 −
走 向 ENE −
変位の向き S上がり −
変位基準と 火山斜面(60万年)に20mの断層崖。 −
変 位 量
平均変位速度 上下方向 0.03 −
(m/千年) 水平方向 −
活 動 度 C −
2)その他の既往資料
星住ほか(1988)では、推定断層として示されている。
3)空中写真判読結果
・火山麓緩斜面上に、ENE−WSW方向の北落ちの断層崖がみられる。崖の高さは20m程度で、やや開析されている。長さは約1.2q。
・大分自動車道より東方では、変位地形は認められないが、リニアメント方向に約1q程度、冷川の直線状の谷が延びる。
4)地表踏査結果
・自衛隊演習場内のリニアメント位置付近で、K−Ah火山灰の分布が不連続になっている露頭を見出した。これは、断層活動による変形である可能性が考えられる。
5)評 価
・目苅断層と同様に地形面の年代(20万年BP)を想定すると、平均変位速度は上下方向で0.1m/千年となり、活動度はB級の下限程度となる。
・上記の露頭の地質状況からみると、最新活動時期は、K−Ah火山灰堆積以後の可能性があると判断してよいと思われるが、次年度以降トレンチ調査で確実に評価する必要がある。