3−3−1 十文字原断層

平成10年度の地形・地質調査結果にもとづく断層の評価概要を次ページに示す。

トレンチ・露頭調査結果

十文字原断層では、断層崖下でトレンチ調査を行ったほか、平成10年度に見出した断層露頭(平成10年度報告書のLoc.16)が法面工事により改変されたため、この露頭の再観測を行った。これらの結果は、スケッチ図、写真、試料分析結果として巻末資料にまとめた。調査結果をもとにした活動性評価を図3−3−1に示す。

@断層の位置

トレンチ・露頭共に古い火山体(20万年BP)に生じている比高約100mの南落ちの断層崖の直下の遷緩点付近で断層を確認した。

A断層の形態・変位センス

高角度の南落ち正断層であり、トレンチでは断層前縁に小グラーベン構造(幅2〜3m)が形成されている。断層面の走向はN60〜75EないしN80Wで、南へ60°〜80°傾斜している。地層の分布・変位からみた変位センスは、上下方向では南落ちが正断層となっている。横ズレ変位については不明である。

B変 位 量

確認された上下方向の変位量は、次の通りである。

Yf火山灰(2,000年BP):変位なし

K−Ah火山灰(6,300年BP):2.1m以上

20,000年BPの地層:3.7〜4.2m(4.0m以上)

AT火山灰(22,000〜25,000年BP):4m以上

C活動時期

最新活動時期は、K−Ah火山灰以後であるが、由布火山灰層準は変形していないこと、付近の14C年代から、3,200年〜6,300年BP間と判断される。その前の活動時期は、20,000年BP頃よりあとであるが、時期の特定は難しい。

D活動間隔、1回の変位量

AT火山灰や20,000年BP頃の、より古い地層とK−Ah火山灰の推定変位量の差は2倍程度であるとみることから、活動間隔はかなり長く、10,000年オーダーで1回の活動での上下方向の変位量は、2mオーダーと推定される。

E平均変位速度、活動度評価

以上のデータをもとに、上下方向の平均変位速度を求めると、

4m/20,000年=20p/1,000年となり、活動度はB級と評価される。

軒ノ井断層の地形・地質調査結果

※平成10年度報告書より転載

1)断層の概要

              九州活構造研究会(1989)        活断層研究会(1991)

確 実 度           T                        T

長   さ(q)          8                         8

走   向           ENE                       ENE

変位の向き         N上がり                     N上がり

変位基準と     万年山溶岩(50万年)の火山斜面に     万年山溶岩(50万年)の火山斜面に

変 位 量      120mの断層崖。                120mの断層崖。

            扇状地面(fM1:12万年)に10m以下     扇状地面(fM1:12万年)に10m以下

            の低断層崖。                  の低断層崖。

            扇状地面(fM3:5万年)に5m以下の     扇状地面(fM3:5万年)に5m以下の

            低断層崖。                    低断層崖。

平均変位速度   上下方向 0.24、<0.08、<0.1          上下方向 0.2、<0.08、<0.1

 (m/千年)     水平方向 −                   水平方向 −

活 動 度      B〜C                       B〜C

2)その他の既往資料

星住ほか(1988)にも断層として示されている。大分自動車道関連の道路公団の工事資料でも日出JCT.付近の法面に溶岩を変位させている断層がみられる。また、道路公団のボーリング資料でもリニアメント北側の古い溶岩の分布標高が南側で低くなっていることが読みとれる。

3)空中写真判読結果

・別府霊園付近から日出JCT.にかけて北方の溶岩台地の南端に直線的な崖がみられる。この部分では、リニアメントは斜面上の遷緩線の連続から成る。

・日出JCT.より東方では、奥畑付近まで斜面上の遷緩線、段丘面上の低崖が連続するが、これより東側ではリニアメントは不明瞭。

・断層の長さは約4.5q。

・溶岩台地南端の崖の比高は、110〜120m、奥畑付近の中位段丘面の変位は5m以下。

4)地表踏査結果

・十文字原演習場内のダム貯水池脇の断層露頭では、断層を挟んで北側には、古い鹿鳴越溶岩と同質の火砕流堆積物が、南側にはそれより新しい高平山火山起源の火砕流堆積物が分布する。黒ボク土の下部が断層変位を受け、断層部のクラックに黒ボク土が落ち込んでいる。この地点での断層両側の地質分布からみた高平山火山起源の火砕流堆積物の変位量は、約100mである。

・別府霊園と日出JCT.の中間付近でリニアメント位置を挟み、火砕流堆積物が約14m南落ちの変位を示す。黒ボク土の下限が変位を受けている。

・この露頭の約20m南側にも、さらに1条の断層があり、火砕流堆積物が約6m以上南落ちに変位している。

5)評   価

・各基準面の変位から上下方向の平均変位速度を求めると次のようになる。

高平山火山起源の火砕流堆積物:0.5m/千年

※この火砕流堆積物は、分布・岩質からみて、高平山火山起源と推定される。

星住ほか(1988)によると、高平山火山の時代は中期更新世の終わり頃である。ここでは、この年代を20万年BPとして計算した。

北側の山地をなす溶岩は、南側では分布が確認されていないので、この火砕流堆積物を変位基準とする方がよいと考えられる。

ただし、火砕流の噴出年代については、より確実なデータを得る必要がある。

中位段丘面:0.04m/千年

※中位段丘面の年代を12万年BPとして求めた。

以上の結果より、活動度は、B〜C級となる。

・最新活動時期は、黒ボク土の形成開始以後である。K−Ah火山灰が変位しているかどうかについての確実なデータは得られていない。