平成10年度の調査では、大分川西側の大分平野の既往ボーリング資料の解析から、沖積層中のK−Ah火山灰層準に最大20m程度の北落ちの落差が存在することが確認された。この落差は、西北西−東南東方向に連続しており、この方向は、別府市南部の朝見川断層及び既往音波探査データによって存在が示唆された高崎山沖合海域の断層の走向とほぼ一致する。以上の点より、この構造は活断層の伏在を示すことが推定された。
今年度の調査では、この推定伏在断層の位置を確認し、断層の活動性(特に完新世以降)や性状を明らかにするため、地層の落差が認められる箇所を横断する測線上で調査ボーリングを実施することとした。
今回、調査ボーリング実施箇所の決定に際し、断層伏在位置付近について、空中写真による微地形の検討を行い、さらに追加収集したボーリング資料とあわせて、沖積層の層相区分とその連続性について再検討し、これらの結果をもとに、調査位置(落差箇所)の絞り込みを行った。この結果は、3章にボーリング調査結果とあわせて示した。
以上の検討作業を踏まえ、K−Ah火山灰の落ち込み位置が最も明瞭に特定できる府内城東側・大分県庁北側の地域を中心にボーリング調査候補地点(複数)を選定し、さらに以下のような調査に適する条件があるかどうかを考慮して調査地を決定した。
<大分市内での調査地選定の条件>
1.想定される断層位置を横断する測線配置が確保できること。地表にあまり障害物がないこと。
2.K−Ah火山灰層もしくは、その相当層準を確認できる既往データが、すでに周辺に存在し、より短い測線長で、断層変位を確実に捕らえられる可能性が高いこと。
3.K−Ah及び中部泥層の分布が期待できること。
4.変位基準面として用いやすい細粒堆積物の分布が期待でき、地層の細かな対比ができる可能性があること。決定した測線は、大分城址公園の東部から大分県警機動隊寮の敷地にかけての測線(大分西−5−1)である。
ボーリングの掘削は原則として、K−Ah火山灰を貫いてその下位の泥層を5〜10m確認できるまで掘進することとしたが、断層の上り側と落ち側のそれぞれ1孔ずつでは、沖積層の基底を貫き、基盤を確認するまで掘削した。
b.堀田−朝見川地区
朝見川地区では断層が推定された山びこ公園の中および周辺でボーリング調査を実施した。当初断層の走向を横断する方向に公園の中でボーリング3孔を掘進したが、断層が確認できなかったため、より内側で4孔めを掘進して断層を確認した。
堀田地区では、千田(1991)で”高位”扇状地の構成礫層中にK−Ah火山灰が挟まれると報告された地点で、断層崖を挟んで2地点でボーリング調査を行った。