7−1−5 <その他の活断層>

このほかにも陸域の活断層のいくつかでは、断層露頭などから、断片的ではあるが、断層の活動性について、次のような情報が得られている。

a.朸小野断層

断層露頭とピットで、K−Ah火山灰以後に活動したことが確認された。K−Ah火山灰層の上下方向変位量は、南落ち約15cmである(平成10年度報告書調査票図表18,19参照)。

b.伽藍岳北断層

断層露頭で、由布岳火山灰(約2,500年BP)層を変位させているたことが確認された。その上位の約1,400〜1,300年BPの年代を示す火山灰層は、変位を受けていない。これより、最新活動時期は、2,500〜1,400年BP間と判断される(平成10年度報告書調査票図表27〜29、図3−2−2参照)。

K−Ah火山灰層の変位量は、2m以上と評価される。

c..ジャナガヅル断層

由布岳火山灰を降下させた池代火砕流の堆積面に変位がみられる(平成10年度報告書付図参照、また、都市圏活断層図「別府」にも同様の変位地形が示されている)。

以上の調査結果と府内断層の調査結果を総合すると、陸域の断層群の特徴は、次のようにまとめられる。

a.完新世(特にK−Ah火山灰以後)の断層活動は、別府・由布院地溝南縁の断層とその延長(由布院―堀田−朝見川−府内)で、最も大きく、K−Ah火山灰層が、最大で約30m程度北落ちに変位している。これ以外の断層では、K−Ah火山灰の変位量は、最大でも3m程度、大部分は1m以下であり、10倍程度の差がある。これを活動度としてみると、地溝南縁の断層系の活動度はA級、それ以外の断層ばB級以下(大部分はC級以下)という評価になる。

b.特に地溝北縁の断層(別府北断層)とは、古い火山体に与えている変位でみると、南縁の断層に匹敵するものであるにもかかわらず、K−Ah火山灰以後の断層活動は、南縁の断層に比べてかなり小さい。とりわけ、立石山以西では、Aso−4火砕流堆積物(7万年〜9万年BP)以後活動していないと判断される。また、唐木山断層を中心とする北部地域の断層や軒ノ井断層とその周辺の日出地域の断層も、同様に活動性が低いと判断される。

c.最も活動的な地溝南縁の断層について、現在得られている情報から、活動時期をまとめると、図7−1−1のようになる。

・地溝南縁の活動度の高い断層の活動間隔は、府内断層で1,100年〜3,300年程度である。由布院断層、堀田−朝見川断層では、確実ではないが、いずれも1,000年〜2,000年オーダーと見積もられ、府内断層と概ね同程度と推定されるが、活動イベントは、必ずしも対応しておらず、府内断層とほかの2つの断層では最新活動時期が、異なっているようである。

・由布院断層と堀田−朝見川断層については、この図では活動イベントに矛盾がないようにみえるが、推定の精度がどちらもあまり高くないので、確実な判断はできない。

・府内断層では、海域の別府湾中央断層で確認されているような、慶長豊後地震に対応する現在より数百年前の断層活動は生じていないと判断される。由布院、堀田−朝見川断層については、この時期に活動した明確な証拠は得られていないが、可能性は否定できない。

・地溝南縁の断層以外の比較的活動性の低い断層群中にも、最新活動時期が、約2,500年BP以後と新しいものが含まれる。しかし、慶長豊後地震に対応する現在より数百年前の断層活動が生じている証拠は確認できなかった。

d.地溝南縁の断層以外の比較的活動性の低い断層群についてみると、変位の向きが同じ複数の断層がグループをつくっており、異なる変位の向きのグループと合わせて、小地溝構造(飛岳付近)や小地塁構造(十文字原付近)を形成しているようにみえる。

e.また、これらの活動性の低い断層群の活動イベントについてみると、全体に同時に活動したとみられる時期は確認できない。一見したところ、活動時期は、ばらばらであるようにみえる。ただし、断層同士で変位の向きは逆であるが、形態や変位量等が類似しているようにみえるものもある(目苅断層と亀川断層)ことから推定すると、活動時期が相互に補完的であることも否定はできない。ただし、年代の分解能があまり高くないため、地溝南縁の断層の活動時期と比較することは難しい。

※暦年代に換算して示す。

図7−1−1 地溝南縁の断層の活動イベント比較