(2)堆積相からのイベント層準の特定

図6−2−2(1)(2),図6−2−3参照)

・対比線@−B間の落ち側の層相は、河川成砂礫層→(海成砂層)→後背湿地に堆積した泥炭層という上方細粒化サイクルが繰り返しており、主に砂礫層から成る上がり側の層相と異なっている。

このようなリズミックな層相変化の原因としては、次の2つの原因が考えられる。

a.断層運動による落ち側の間欠的な沈降とそれに続く沈降部の埋積による堆積物の変化が2回生じた。

b.気候変化などによる堆積物の変化が2回繰り返された。 

ここでは、後背湿地堆積物と推定される泥炭層の堆積条件をどう考えるかが、判断の鍵となる。一般的にみて、このような泥炭層は、当時の海水準と同程度の標高かそれより高い位置で形成されたと考えられ、海水準よりかなり下で形成されることは、考えにくい。最新の後背湿地堆積物である最上部泥層の分布標高からみて、現在の海水準付近かそれよりやや高い標高で形成されたと考えられる。

b.では、対比線3直上の砂礫層が、その堆積直前にイベントUで作られた、No.4とNo.6の間の斜面を徐々に埋め立てていく過程で、気候変化などによる堆積環境の変化が2回あったと推定することになるが、この説では、当時No.4とNo.6の間に高度差10mに達する斜面があり、その後の埋積で海面下に沈んだことになる。これは、現在の地表状況からは考えにくいことである。

一方、a.では、断層活動による急激な沈降が、下位の細粒(泥炭)層の上に、急に粗粒な砂礫が堆積し、それによる埋積で堆積面が当時の海水準付近まで上昇し、泥炭層が堆積したと考えることができ、層相変化とその原因の説明が容易である。

以上の検討より、落ち側の堆積物の層相変化から、次のようにイベント層準が特定できる。

イベントT : 上位の泥炭層とその上の砂礫層の境界  

イベントU : 下位の泥炭層とその上の砂礫層の境界

年代としては、各泥炭層最上部の年代の直後と推定される。また、落ち側のみに分布する地層の層厚から各イベントでの上下方向変位量を推定することができる。

なお、K−Ah火山灰より前については、貝化石のG1層−G2層境界の年代(補正年代で8,700(暦年代で9,800)年BP頃と推定される)までは、活動イベントが認定できない。

以上より、府内城測線での、断層活動イベントは、表6−2−1のようにまとめられる。

表6−2−1  府内城測線断層活動イベント