5−5−1 沖積層中のK−Ah火山灰層の層相

大分市内のボーリング調査で海成の沖積層中で確認されたK−Ah火山灰層は、一般に補図−1(図5−4−1)のような層相を示す。その他の地域の陸成沖積層中の試料を含め、K−Ah火山灰層とその近傍の層準の試料の火山灰分析結果を補表−1(1)(表5−5−1),(2)(表5−5−2)に示す。府内城測線の試料では、火山灰層を細区分した各部位から採取した試料を比較した。

この結果から、K−Ah火山灰層の性格が次のようにまとめられる。

・軽石質火山灰葉理部(下部)の下位の泥層には、K−Ah火山灰起源の火山ガラスは、全く含まれず、時代の古い複数の火山灰由来のガラスのみが含まれる。

・軽石質火山灰葉理部(下部)部分には、他の火山灰と混在してはいるが、多量のK−Ah火山灰起源のガラスが含まれる。

この2点からみて、この葉理部の下限が、ほぼK−Ah火山灰の噴出・降下時代に対応しているとみてよい。

・火山灰層の本体とみられる白色のガラス質火山灰は、ほとんどがK−Ah火山灰起源のガラスから成る。全体に上方細粒化構造を示し、極細粒部では、下位の粗粒な部分に比べて、また、他の陸成層中の同火山灰に比べて、扁平型のガラスの含有量が多い(表−1(2)(表5−5−2)参照)。

このような堆積構造や層相変化に伴うガラスの形態の変化は、元来のK−Ah火山灰が水中でなんらかのの移動・堆積過程を経たこと、その途中でガラスが粒度的・形態的に淘汰されたことを示す。

また、ほかの火山灰起源のガラスがほとんど含まれないことからみて、この部分は、地質学的時間でほぼ一瞬の間に堆積したものと推定される。そのような堆積機構として考えやすいのは、何らかの形態の堆積物重力流であろう。

・火山灰層の最上部は、泥質分を多く含み、上位の泥層へ漸移する。この中にも多量のK−Ah火山灰由来のガラスが含まれる。ガラスの形態をみると、あまり扁平型は多くない。

このような産状は、単層としてのK−Ah火山灰の上限は、白色火山灰の上限であり、その上位の泥層中に多量に含まれる火山ガラスは、火山灰層主部とは別の機構でもたらされたことを示唆する。  

以上のように、沖積層中のK−Ah火山灰層は明確な特徴を有し、鬼界カルデラ由来の火山灰の一次堆積物から成る地層として認定できる。