(2)大分川左岸測線(P波)

大分川左岸において、重錘落下振源を用いたP波による浅層反射法探査を実施した。測線は堤内の法尻に設けたが、天板上の道路を通行する一般車両による振動が予想外に大きいノイズとなったため、現場においては必要なS/Nを確保するために、10回程度の垂直重合と大きいノイズを含んだ記録のキャンセルが必要であった。

図5−1−9にオリジナル波形例を示す。図5−1−10−1図5−1−10−2にフィルター処理後波形例を示す起振点で140m毎に示す。バンドパスフィルターでは20〜150Hzを通過周波数帯とし、AGCのオペレータ長は100msとした。また、表面波ノイズが大きかったため、ボトムミュートを適用して表面波を消去した。図5−1−11にデコンボリューションパラメータテスト(オペレータ長を5,10,20msと変更)結果例、図5−1−12にはデコンボリューション処理結果例を示す。デコンボリューションのオペレータ長は10msとした。図5−1−10−1のスタック前の波形例を観察すると、起振位置により多少ばらつきのあるものの、300msより早い時間に多くの反射波を認めることができる。往復走時80msを境にして、80ms以前に現れる反射波はそれ以降の反射波と比べて、見かけ速度が小さいなどその特徴が異なる。

図5−1−13には速度解析結果より求めた区間速度分布を示す。図5−1−14には速度解析結果よりCDP重合を行った結果である時間断面を示す。時間断面を観察すると、測線距離200ms付近を境にして、北側では南傾斜、反対に南側では北傾斜を示す反射面が多数見られる。そして測線距離200m付近では、それぞれの反射波が交差しているように見える。これは、地下に谷状の反射面が存在する地質構造の場所での反射断面に見られる特徴的なパターンであり、南傾斜の反射面と北傾斜の反射面とで谷状の構造を成していると推定できる。図5−1−15には、マイグレーション後時間断面を示す。マイグレーションには、速度解析で求めた速度テーブルを用いた。マイグレーション処理後の結果においては、南傾斜と北傾斜の反射波の交わりがほぼ解消され、北側、南側それぞれの傾斜した反射面を構成する地層どうしが接するところも読み取れるようになった。このようにマイグレーションの効果で解釈しやすい断面となっているので、この測線の解釈には主にマイグレーション処理後の時間断面を用いた。ここで往復走時の早い時間(深度の浅い反射面)に着目すると、測線北側では往復走時が90msより小さい反射波はほぼ平坦となっている。またここでも測線距離200m付近を境界として、測線南側では比較的反射波が不明瞭となるが、往復走時が50ms前後より小さい反射波が平坦となっている。このような状況は、図5−1−13の区間速度分布にも現れており、反射面の平坦な部分では、P波速度が1300〜1800m/sであるのに対し、それより下位では、P波速度が2000〜2800m/sと高くなっている。

図5−1−16には、時間断面に深度変換を施した結果(深度断面)を示す。深度変換には、図5−1−13に示した速度テーブルを平滑化して用いた。