本測線西側の西大分泊地では、平成11年度に断層追跡のための音波探査が実施されており、明瞭ではないものの、沖積層を変位させている、断層と推定される構造が認められた。また、この構造の東南方延長部にあたる石油基地のあたりには、比較的多くの既往ボーリング資料があり、北西−南東方向に延びる基盤上面およびK−Ah火山灰の北東側落ちの構造が抽出された。さらに、測線東方の赤十字病院付近でも、既往ボーリング資料から北東落ちの地質構造が抽出された。これらの構造は、西北西−東南東に連続する一連のものと推定される。以上の検討結果から、府内城測線からのびる断層の存在範囲を推定した※。
また、赤十字病院付近の表層には、河川性の粗い砂礫がやや厚く堆積しており、詳細な断層調査には不向きであるが、春日神社から石油基地にかけては、後背湿地の細粒な堆積物をはさむ砂州ないし浜堤の堆積物が表層を覆っており、他の測線より全体的に細粒とみられる。したがって、ほかの測線に比べて、新しい時代の断層活動についての情報が得やすいと期待された。
一方、この付近には古い住宅が密集しており、道幅も狭いため、既往の地質データが存在し、比較的高い確度で断層位置が絞りこめる地点で断層横断方向の調査測線を設定することは困難であった。
以上の状況を考慮して、調査測線は、春日神社東方の道路沿いに設定した。この測線付近には地質構造解析に用いることのできるボーリングの資料はあまりないが、測線の東側と西側の地質情報から考えると、この測線は断層位置をほぼ横断していると推定された。