4−3−4 平均変位速度の算出

・Kj−5面及びY層上面

平成10年度の調査では,Kj−5面堆積物の上部あるいは直上にAT火山灰の降灰層準を認めKj−5面の年代を24,000〜25,000年前と推定している.貝塚地区の群列ボーリングの結果では,AT火山灰を挟む礫層(Y層)が認められる.Y層の上部にAT火山灰を挟むことからY層上面がKj−5面に対比される可能性がある.このY層上面の形成時期は,得られている年代値から最終氷期最盛期かもしれないが,ここでは約22,000yBPより新しく,X層の年代(約7,800yBP)より古いとしておく.

Y層上面は,断層の東側で沖積面から鉛直下方約8.5mに分布しているが,断層の西側では確認されていない.このため,Y層上面とKj−5面が対比できるものと仮定して,Y層上面の落差を求める.Kj−5面は群列ボーリング測線から約600m北方に分布する.そこでのKj−5面の東縁は低断層崖で切られており,沖積面に面している.この低断層崖の高さは約1.5mである.この低断層崖の高さと群列ボーリングで確認されたY層上面の深度から,Y層上面の落差は約10mであると推定される.

Y層上面の推定される落差と年代から求められる鉛直方向の平均変位速度は0.45m/1,000年程度より大きく,1.3m/1,000年程度より小さい.

・X層上面

群列ボーリング調査により,X層上面の分布形状と年代が把握されている.X層は崖を覆う地層である可能性があることと,予想される再来間隔に対し十分に古い地層でないので良好な変位基準ではないのだが,参考にX層を変位基準とする.X層上面の落差は,約3.4m程度あるいはそれより小さい.また,X層の年代は7,760±50yBPである.これらのことから,加治川断層の鉛直方向の平均変位速度は

0.44m/1,000年程度より小さい可能性がある.

貝屋地区及び貝塚地区で求められた平均変位速度から,加治川断層の鉛直方向の平均変位速度は0.3〜0.5m/1,000年程度と推定される.