これらの地形面のうちKj − 3面を構成する堆積物中には,K−Tz(鬼界葛原テフラ:90,000〜95,000年前),On−K(御岳潟町テフラ),Aso−4(阿蘇4テフラ:85,000〜90,000年前)に対比される火山灰起源の火山ガラス,鉱物が検出された.堆積物の最上部にはAT(姶良Tn火山灰:24,000〜25,000年前)に対比される火山ガラスが検出され,5,850±40 y BPの14C年代を示す炭化物が含まれる.Kj − 3面を構成する堆積物中から8〜10万年前の火山灰が検出され,堆積物最上部により新しい年代を示す火山灰や炭化物が含まれることから,Kj − 3面は最終間氷期(8〜13万年前)に形成されたものと判断される.
加治川断層による変位を受けている断層西側のKj − 5面を構成する堆積物の上部には,ATに対比される火山ガラスが検出され,その下位の層準にあたる腐植質シルトからは,35,680±1,210 y BPの14C年代値が得られた.これらの試料分析の結果,本地形面はAT降灰期である24,000〜25,000年前に形成されたと判断される.
断層東側に分布するKj − 5面においても同様に火山灰分析を実施した結果,ATは検出されず,As−K(浅間草津テフラ:13,000〜14,000年前)を起源とする可能性の高い鉱物が検出された.断層東側のKj − 5面では,地表面下約60cm付近に縄文時代中期の遺跡が確認されており,断層西側に分布するKj − 5面より後に形成されたより新しい地形面である可能性がある.今回の調査では,これらの地形面を区分することはできず,同一の地形面Kj − 5面として取り扱った.今後,これらの地形面の区分・形成年代について検討を行う必要がある.
今回の調査では,Kj − 1面,Kj − 2面,Kj − 4面,Kj − 6面の形成年代を特定することができなかった.小松原(1991)に従ってKj − 1面を20〜35万年前,Kj − 2面を15〜20万年前に形成された地形面とすると,胎内川以南に分布する各地形面の形成年代は,月岡断層周辺に分布する地形面(T1面〜T4面)の形成年代とほぼ一致する.