(1)貝屋地点

貝屋地点のピット調査は,加治川断層に相当するリニアメントの東側に分布するKj − 5面の形成年代を把握することを目的として,図3−3−1に示す位置で行った.

ピット掘削調査の結果によれば,本地点の地質は,わずかに花崗閃緑岩の細礫を含む黄褐色〜オリーブ褐色を呈するアルコース質中〜粗粒砂からなり,ところどころ弱い葉理が認められる(図3−3−2).

地表下0.7〜2.3mのアルコース質砂を対象として火山灰分析を,地表下0.3〜0.7mの砂層中の炭化物を対象として14C年代測定を実施した.火山灰分析の結果,火山灰起源と判断される斜方輝石が,地表下0.7〜0.85mと1.9〜2.1mの層準で検出された(図3−3−3).検出された斜方輝石の屈折率は1.700〜1.713であり,As−K(浅間草津テフラ)に対比される可能性が高い.しかし,検出された斜方輝石は含有量が極少量であること,火山ガラスがほとんど含まれていないことなどから,火山灰を特定するに至らなかった.また,地表下0.3〜0.7mのアルコース質中粒砂中に含まれる炭化物からは,60±40 y BPの14C年代値が得られた.これは,生物攪乱などにより最近の年代値を示す炭化物が堆積物中に埋積されたものと判断され,Kj − 5面の形成年代を示すものではないと判断される.

ピット調査位置付近では,加治川村教育委員会により縄文遺跡の発掘調査が行われており,その結果によれば,約4,500年前の縄文時代中期の土器や遺構が地表下60cm付近で確認されている.今回の調査では,縄文遺跡及び遺物は発見されなかった.