4−6 活動間隔および単位変位量

Cトレンチでは、最新活動時期のイベントの他に、C層がD層に傾斜不整合で覆われることからC層堆積後、D層堆積前に断層活動によるイベントを認定した。このイベントが、最新活動時期の1つ前の活動であるか特定はできないが、7,500〜13,000年前の間に少なくとも1回のイベントがあったと判断される。

活動間隔については、過去に発生した複数回の断層活動時期を特定することができず、断層の活動間隔を詳細に特定するに至らなかった。しかし、概略の値として以下の式で活動間隔を求めることが可能と考えられる。

R=D/S

R:活動間隔(年)

D:単位変位量(m)

S:平均変位速度(m/千年)

前述したように月岡南地区でのB測線沿いの調査結果および地形・地質調査結果から鉛直方向の単位変位量D=3m、鉛直方向の平均変位速度S=0.4〜0.5m/103年が明らかになっており、これらの値から活動間隔R=6,000〜7,500年と算出される。

最新活動時期が、約4,630〜5,870年前であること、活動間隔が6,000〜7,500年であることから最新活動時期の一回前の活動時期は10,600〜13,300年前と計算によって求められ、Cトレンチで判断されたイベントの年代と調和的である。活動間隔が6,000〜7,500年とした場合の過去30,000年間における活動時期を図4−6−1に示す。

また、野中地区のボーリング調査結果によると、過去24,000〜25,000年間の鉛直方向の変位量は11mであることが明らかになっている。野中地区で求めた変位量は広範囲に分布する地形面から変位量を求めたもので、実変位量は地下深部の断層傾斜角60゜を反映しており、12.7m(11m/sin60゜)となる。これに対し、月岡南地区で求めた鉛直方向の単位変位量3mは、断層近傍の地形面から求めており、地表部の断層傾斜角25゜から地下深部の断層傾斜角60゜の間を反映したもので、実変位量は3.5〜7.1m(3m/sin60゜〜3m/sin25゜)の間と判断される。したがって、過去24,000〜25,000年間の活動回数は、12.7m/(3.5〜7.1m)=1.8〜3.6回となり、2回から4回の間と考えられる。活動回数2回とした場合、活動間隔が10,000〜20,000年となるが、Cトレンチから求まる1つ前の活動時期は7,500〜13,000年前であり、活動間隔には数十%の誤差があると言われていることを考慮すると、活動間隔は概ね10,000年となる。したがって、最近25,000年間の変位量と単位変位量から求まる活動間隔は約5,000年(活動回数4回の最大値)から10,000年の間と考えられる。この値は、平均変位速度から求まる活動間隔を包含する値である。

上記したように、過去複数回の断層活動時期を特定できなかったため、断層の活動間隔については、概略の値しか求めることができなかった。

次に月岡断層帯の地震規模について推定する。

地震の規模を示す尺度として、断層運動の大きさを示す地震モーメントから算出されるモーメントマグニチュードを求めた。地震モーメント(Mo)およびモーメントマグニチュード(Mw)は、以下に示す式によって算出される。

Mo=μLWDf

Mw=2/3×log(Mo)−10.7

Mo:地震モーメント

μ :剛性率(3×1011 dyn / cm2)

L :断層面の長さ(cm)

W :断層面の幅(cm)

Df:断層面上での変位量(cm)

Mw:モーメントマグニチュード

地震モーメントを算出するにあたって、月岡断層帯の長さ(L=30km)を断層面の長さとした。また、日本列島陸域では、深さ約20kmを越える地下深部では地震が発生していないことから、断層面の深さを15〜20kmと仮定し、反射法地震探査結果で明らかになった断層面の傾斜60°から断層面の幅を算出した。断層面上での変位量は特定できていない。断層面上での変位量を、

@地表付近での変位量とした場合、

D=3.0m(鉛直方向)であるからDf=3.5〜7.1mとなり、

Mo=5.5〜14.8×1026 dyn・cm

Mw=7.12〜7.41

A平均変位速度(S)と活動間隔(R)から算出した場合、

D=S×R=2.4〜3.75m(鉛直方向)であるからDf=2.8〜4.3mとなり、

Mo=4.4〜8.9×1026 dyn・cm

Mw=7.06〜7.27

B花崗岩の上限面の変位量と活動間隔から算出した場合

D=(花崗岩上限面の変位量)/(活動開始時期からの活動回数)

(活動開始時期からの活動回数)=(活動開始時期)/(活動間隔)であるから

D=1.9〜4.2m(鉛直方向)、Df=2.2〜4.9mとなり、

Mo=3.4〜10.2×1026 dyn・cm

Mw=6.99〜7.31

となり、月岡断層帯の活動に伴う地震規模は、マグニチュード7クラスであると推定される。