また、これらの地形面の火山灰分析の結果、T3面が最終間氷期(8〜13万年前)の堆積物であること、T4面(姶良Tn火山灰を挟在)が2.4〜2.5万年前の堆積物であることが明らかになった。T1面、T2面の堆積年代については、小松原(1991)によればT1面は20〜35万年前、T2面は15〜20万年前とされている。これらの堆積年代をもとに断層の両側で対比された各地形面の分布標高、堆積年代から月岡断層の鉛直方向の変位量および平均変位量を算出した。各地形面の変位量を算出した地形断面を図4−3−1に、堆積年代、変位量および平均変位速度を表4−3−1に示すとともに、変位量と堆積年代の関係を図4−3−2に示す。
地形面の変位量は、累積性が認められ、平均変位速度を見積もると0.24〜0.49 (+) m / 103 yとなり、どの地形面においても、おおよそ一様な値が得られた。
また、野中地区で実施したボーリング調査結果によれば、断層上盤側の地形面であるT4面と同時期の堆積物(D3−2層)が断層下盤側でも分布することが確認された(図4−3−3)。断層上盤側の地形面は断層活動により変形を受け、凸状地形をなしている。変位量を見積もるに際して、変形を受けていない下流側の標高、地形面勾配からT4面の鉛直方向の変位量を見積もると、11mとなり、平均変位速度は0.44〜0.46 m / 103 y となる。
上記のことを総合的に判断すると、月岡断層は、鉛直方向の平均変位速度0.4〜0.5 m / 103 y 程度の活動度B級の活断層であり、T1面形成後の活動は、現在までほぼ一様であったと考えられる。
村松断層では、地形面の堆積年代が特定できていないが、柳田(1981)に従い、M1面をT4面に対比すると、変位量は8.5〜11.5m、平均変位速度は0.34〜0.48 m / 103 y と算出され、月岡断層における平均変位速度と調和的な値を示す(図4−3−1、表4−3−1)。