また、笹神丘陵東縁部に判読されるリニアメントは、現河川を境して扇状の形状を示し、地形的な要素からは西傾斜の逆断層が想定される。
月岡断層の中間地点にあたる笹神村上坂〜同村出湯間で実施した反射法地震探査結果によると、図4−2−1に示すように、笹神丘陵東縁部に西傾斜の逆断層が認められ、確認された断層の傾斜は、表層付近で50゜程度、深部では60゜程度である。
戸板沢地区、月岡南地区におけるボーリング調査では、図4−2−2〜図4−2−3に示すようにその調査地域の基盤をなす安野川層と村杉低地を構成する堆積物を境する西傾斜で、傾斜角25゜の逆断層が確認され、反射法地震探査結果と矛盾しない。
これまでの研究成果によると、笹神丘陵を分離する諸河川の多くは、リニアメントを境して500〜900m程度の系統だった左屈曲を示し、月岡断層は水平ずれ(左横ずれ)の可能性が指摘されている。しかし、今回実施した空中写真判読結果によれば、笹神丘陵の東側に位置する五頭山地から流れる諸河川および沢の西側延長部にあたる笹神丘陵尾根部には、旧流路跡である風隙が見られる場合が多く、風隙を伴う谷の下流には五頭山地から供給された土石流堆積物(T2)が分布している(図4−1−4−1、図4−1−4−2)。また月岡南地区で実施したCトレンチにおいて観察された副断層の条線は、70〜85゜Sの方向を示しており、また副断層に切られるD層中の植物根跡の腐植土には横ずれが認められない。
上記のように空中写真判読およびトレンチの副断層の条線・変位から判断すると、月岡断層が横ずれ成分をもつ可能性は低いと判断され、笹神丘陵を分断する河川の屈曲は、断層活動に伴い隆起する丘陵によって流路が遮られたこと、五頭山地から供給される土石流堆積物により河川が埋積したことが影響していると考えられる。
村松断層は、低断層崖の西側(上盤側)で背斜状の高まりが認められ、また月岡断層と同様に愛宕ヶ原が西に緩く傾斜するケスタ地形(傾動地塊)をなしており、西傾斜の逆断層が想定される。渡辺・宇根(1985)によれば、断層近傍で西側隆起の逆断層が確認されている。また、高浜ほか(1980)による正断層露頭においても西傾斜の逆断層(小断層)が確認された。従って、村松断層も月岡断層と同様に西傾斜の逆断層と判断される。村松断層も月岡断層と同様に水平ずれ(左横ずれ)が指摘されているが、村松断層を横切ると河川や地形がないため、確認できない。