(1)地質

月岡南地区の地質は、下位から基盤岩の安野川層(新潟油田層序の西山層に対比)、村杉低地沿いに堆積した低地堆積物(A層、B層、C層、D層)、笹神丘陵から供給された扇状地堆積物(E層)に区分される。また、C測線には、古土壌およびチャネル堆積物が分布する。

以下に各層について記載する。

A.安野川層(An)

灰色で均質・塊状の砂質泥岩からなる。ところどころ淡黄灰色を呈する石灰質ノジュールを伴う。本層中には傾斜20〜90°の割れ目がみられ、これらの一部はノジュールを剪断する面なし断層である。本層はこの地区の基盤岩となる新第三紀鮮新世〜第四紀前期更新世の地層で、新潟油田層序では西山層と呼称される。

B.村杉低地堆積物(A1〜A3、B1〜B2、C、D)

本層はシルト、砂、礫およびその互層からなる。村杉低地堆積物を構成する礫は、花崗岩の亜角礫が多く、礫層および礫混じり砂では、基質に石英や長石粒子が顕著に見られる。また村杉低地側では礫を含む割合が多く、礫層が優勢となる。

単層の対比は、土相の側方変化が著しく、非常に困難であるが、大局的にみると本層は下位から礫層、シルト層、礫混じり砂層を1つのサイクルとした堆積ユニットが4回みられる。それぞれのユニットを下位からA層、B層、C層、D層と呼称する。さらにA層は下位からシルトを主体としたA1層、礫層およびシルト層を主体としたA2層、礫混じりシルト層を主体としたA3層に細分される。B層は、下位から礫層およびシルト層を主体としたB1層とシルト質砂層および礫混じり砂層を主体としたB2層に細分される。C層は、礫層、シルト層、礫混じり砂層の堆積サイクルはAおよびB層にくらべ不明瞭であり、両層より土相変化が著しい。本層は礫層、礫混じり砂層、シルト層を主体とする。D層は、基底礫層を伴うシルト・砂を主体とし、チャートや頁岩の亜円礫を含む。

A1層、B2層、C層およびD層を対象に14C年代測定を実施した。A1層は>47,470± y BP、B2層は24,380±110〜33,670±370 y BP、C層は13,270±280〜21,790±240 y BP、D層は6,770±80〜8,070±40 y BPの結果が得られた。

また、C測線で実施したボーリングおよびトレンチ調査で確認されたD層中には、木の根状〜レンズ状の腐植質なシルトが認められ、これらの14C年代測定を実施した結果、4,030±60〜7,170±50 y BPの結果が得られた。この結果は、後述する上位層よりも新しい年代を示しているが、試料の産状が木の根状〜レンズ状であることから、これらは植物根跡の腐植物であると判断しD層の堆積年代を示すものではないとして取り扱った。

C.扇状地堆積物

本層は調査地域の南側の沢から供給された扇状地堆積物およびチャネル堆積物で、下位層にあたる村杉低地堆積物を覆って扇状地面を形成し、シルト・礫・砂の不規則な互層からなり、礫は、花崗岩、チャート、頁岩の小〜人頭大の亜円礫を主体とする。本層は、A測線付近に分布するE2〜E5層、およびB測線付近に分布するE1層およびE層に細分することができる。

E1層は、シルト・砂質シルトを主体とした層で、B測線付近に分布する扇状地面を構成する堆積物である。E2層は、 礫層、礫混じり砂層を主体とした層で、村杉低地堆積物であるD層を浸食した沢部を埋積するチャネル堆積物である。E3層〜E5層は、扇状地面を構成する堆積物で、E3層は、礫層を主体とする。E4層およびE5層は、砂質シルトを主体とする。

E1〜E5層の各層を対象に14C年代測定を実施した。 E1層は5,980±120〜6,310±60 y BP,E2層は5,330±70〜5,890±90 y BP、E3層は4,630±70〜4,750±70 y BP、E4層は2,100±80〜2,520±50 y BP、E5層は1,000±50 y BPの結果が得られた。

E層は、月岡−5孔、9孔で確認される扇状地堆積物で、B測線から北側に扇状の扇状地面を形成している。本層は、礫、礫混じりシルトからなり、B測線沿いではE1層およびD層を浸食しているが、年代データが得られておらず、E2層〜E5層との関係は不明である。

D.古土壌

本層は、Cトレンチ掘削時に確認され、砂質シルトを主体とする。土壌化した層は2枚認められ、下位を古土壌I、上位を古土壌IIとする。14C年代測定結果によると、古土壌Iは、7,480±130 y BP、古土壌IIは、6,870±70〜6,870±100 y BPであり、D層の最上部の年代とほぼ一致する。

E.チャネル堆積物

本層は、Cトレンチ掘削時に確認され、礫混じり腐植質シルトからなる。本層は下位のD層および古土壌を浸食して堆積している。14C年代測定結果によると、5,140±80〜7,280±100 y BPであった。このうち、古土壌I、IIとほぼ同時代の年代結果が得られたのは、古土壌I、IIの一部がチャネル内に取り込まれていると推定される。したがって、本層の堆積年代は、土壌IIの堆積後(6,870 y BP)〜5,140±80 y BPと推定される。