浅層反射法探査の解析作業における速度解析、既存ボーリング資料における速度検層結果との対比、S波速度による地震応答解析等への基礎資料とする目的で実施した。
(※当初計画にはない調査項目であるが、自社研究のため、国際航業鰍フ負担により実施した。)
(2)調査位置および調査数量
調査ボーリングB−1の孔内を利用した。表2−2−11に調査数量を示す。
表2−2−11 速度検層調査数量表
P波の66m以深、S波の36m以深は、記録データが著しく不明瞭で、測定できなかった。
(3)現地調査実施期間
P波検層:平成9年12月8日
S波検層:平成10年1月24日
(4)担当者
渡子 直記(技術士:応用理学)
秋山 芳朗
三好 壮一郎(博士:理学)
(5)調査仕様
速度検層に先立ち、VP65塩化ビニール製一般管(無孔管)を孔底まで挿入し、管と掘削孔間を荒砂で充填した。震源は、P波ではボーリング孔のごく近傍に鋼板を置き、それを上から掛矢で打撃する掛矢起震とした。また、S波では角材をボーリング孔から1m離れた地点に南北方向に置き、掛矢で角材の両端を打撃する板たたき法とした。弾性波の伝播を高くするため、板の上に自動車を載せ、板と地面が十分に密着した状態で起震した。P波検層では12チャンネルのボアホールピック(2m間隔)、S波検層では3方向受振の4連ボアホールピック(2m間隔)を使用し、ともにダウンホール法により測定した。
(6)測定結果
P波およびS波の検層結果を表2−2−12に示す。また、走時を図2−2−7に示す。巻末資料6にS波検層測定データを添付した。
(7)考察
(ア)P波検層結果の考察
全区間の平均速度はVp=1500m/sと水のP波速度にほぼ一致する結果が得られた。
これは、起震されたP波が、孔内にたまった水を伝わって、ダウンホールされた受振器に到達したことを示す。地盤の真のP波速度は、水の速度以下であると考えられる。
(イ)S波検層結果の考察
P波速度と異なり、深度とともに速度が増加する傾向を示した。
図2−2−8の走時曲線図から、深度14m以浅の@層、深度14〜18mのA層、深度18m〜36mのB層に分けられる。それぞれの区間速度は、@層でVs1=120m/s、A層でVs2=154m/s、B層でVs3=400m/sであった。
これらの@〜B層は、コア観察による地層区分の境界と完全には一致していないが、概ね次のような地層と対比される。
@層(Vs1=120m/s):盛土、南陽層上部
A層(Vs2=154m/s):南陽層上部、南陽層下部
B層(Vs3=400m/s):南陽層下部の一部、第一礫層、熱田層、海部・弥富累層、東海層群の一部
また、深度36m以深では、スタック数を20回までに増やしたが、S波の受振には至らなかった。これは、地盤の物性が著しく異なるためで、36m以浅の未固結堆積物と、半固結〜固結した東海層群の違いによるものと考えられる。
(8)まとめ
P波速度の分布が水を伝わるP波速度で一定なことから、当初期待された浅層反射法深度断面図の精度向上には至らなかった。また、これまでに速度検層結果を伴った既存ボーリング資料は見つかっていない。
測定されたS波速度は、地震応答解析等の基礎資料としての利用が望まれる。
表2−2−12 速度検層結果
図2−2−7 走時曲線図