観察結果は、縮尺1/10地質柱状図(巻末資料1−@)、縮尺1/100地質柱状図(図2−2−2)に記載した。
ボーリングコア観察および柱状図作成にあたっては、以下の点に留意した。
・観察は、肉眼で識別でき、かつ上記縮尺で表記可能な精度で地質を区分する。
・区分した単層は、層相、粒度、色調、堆積構造、動植物遺体等の化石、考古遺物等について詳細に記述する。
・基質の流失、スライムの混入等、ボーリング調査のコア観察において特有の現象については、その都度柱状に記載し、現地盤と異なることを注記する。
(2)コア写真
コア写真は、巻末資料1−Aに添付した。
コア写真撮影については、以下の点に留意して実施した。
・ボーリングコアは、二箱(6m)ごとに撮影した。
・コア撮影時においては、試料本来の色調を呈するよう、撮影前にコアを撒水器によって湿らせた。
・薄曇りの日中に、屋外にて撮影した。
図2−2−2−0 柱状図凡例
図2−2−2−1 1/100柱状図(0〜20m)
図2−2−2−2 1/100柱状図(20〜40m)
図2−2−2−3 1/100柱状図(40〜60m)
図2−2−2−4 1/100柱状図(60〜70m)
(3)コア採取率
本調査におけるコア採取率は、砂・砂礫層で50%以上、粘性土で90%以上であった。
南陽層(沖積層)を主体に、水を多く含んだ極めて軟弱な砂層の採取に困難をきわめた。このため深度70mまで掘進後、1m離れたごく近傍に別孔を設け、深度18.5mまで水圧サンプラー、25mまで通常工法(ロータリー式工法)による再掘削を試みた。これにより、南陽層のコアの大部分は採取できたが、深度4〜5mのコアが依然採取できず、さらに別孔を設け、水圧サンプラーによる採取を試みたが、非常に軟弱・高含水の地質のため採取するに至らなかった。
海部・弥富層、東海層群の一部では、砂礫層と推定される区間の採取が非常に困難であった。一般に、砂礫層ではマトリックス(基質)の採取が難しい。このため、砂礫層の採取率が高いロータリーパーカッション工法を採用したものの、砂礫層が予想以上にルーズであったと考えられ、結果的にコア採取に至らない箇所が生じた。
ロータリーパーカッション工法における1回の掘進長は1mである。このため、コア観察にあたっては、コアの欠損した部分の前後では、現在のコアの位置が1mの範囲内で原位置からずれている可能性があり注意を要する。コアを採取できなかったり、採取率が低下した区間を表2−2−3に示す。地質が推定できる場合は、推定される地質を記述した。
表2−2−3 コア欠損および採取率低下区間と推定される地質
(4)地層区分
地層の区分においては既存の試料を参考に、層相や層準の組み合わせを判定基準として対比を行った。地層境界深度を推定した理由を@〜Eに示す。また、地層境界深度のいくつかは、コアの採取が良好でない部分に想定されるものがあり、若干上下に移動する可能性があるので、その点についても触れる。
表2−2−4に、本調査における層序区分を示す。また、参考資料として、名古屋港西地区ボーリングコア分析調査報告(1996)において詳細な地質検討のなされたTB−1における層序区分を添えた。本調査地とTB−1の位置は、図2−2−3に示した。
表2−2−4 本調査における層序区分
図2−2−3 名古屋港西地区ボーリング(TB−1)位置図
@盛土と南陽層上部砂層の境界
採取したコアのうち、0.00〜約9.00m 区間においては、コアが軟弱で欠損および基質の流失が起こっている部分が多く見られる。このうち、約5.00mまではプラスチックやビニール片などの混入が見られ、明らかに盛土あるいはごく最近の堆積物である。7.00〜8.00mの区間は基質が流失し、残存した長径5cmにおよぶ塩基性岩の角礫が観察される。上下の堆積環境から考えて、このような礫の存在は明らかに不自然であり、この層準も人工物を含むものとして認識出来る。8.00〜9.00m区間は掘削により原型を留めていないが、極めて新鮮な植物の茎などを含んでおり、最近の堆積物と思われる。9.00m以下も軟弱ではあるが、やや締まりが良くなりコアの原型を良くとどめている。
従って、9.00m前後に盛土と南陽層上部砂層の境界が存在すると想定される。しかし、8.00〜9.00m区間が原型を留めず、9.00〜9.13mの区間はコアが得られていないため、便宜上9.00mを境界部とした。
A南陽層上部砂層と下部粘土層の境界
約9.00〜21.96mは砂と粘土から構成される。上部から下部に向かって砂優勢から粘土優勢に変化し、漸移的な層相変化を示す。
従って、両者の境界は決定しにくいが、全体としては粘土成分が多く明瞭な砂層は僅かであるため、明らかに粘土優勢になる16.24mを両者の境界部とした。
B南陽層下部粘土層と第一礫層の境界
21.96mから粘土層に突然径10〜30mmの礫が混入し、22.00m付近から層相は急激に砂礫層に変化する。この礫層は径2〜40mmの円礫、亜円礫を含み全体に淘汰が悪い。この礫層は第一礫層と考えられる。
従って、21.96〜22.0mに観察される粘土と礫の混在部分は南陽層下部粘土層と第一礫層の境界部と推定される。
C第一礫層と熱田層の境界部
第一礫層は23.50〜24.00m付近にやや粗粒で青灰色〜乳灰色を示す砂層を挟み、22.0〜24.20mの間で再び砂礫層に戻る。この砂礫層はマトリックスをやや流してしまっているが、層相は23.50mより上位の砂礫層によく似ている。24.20〜27.90mは粘土優勢で、やや砂および礫に富む部分を伴う。24.20〜26.60mは植物片などの有機物を多量に含む。特に25.00〜26.00m区間は有機物を多量に含み、暗褐色を呈する。26.15〜26.60mは粘土層であるがやや砂に富むようになる。この砂は粘土中に均質に分布するのではなく、パッチ状に砂の多い部分が点在している。また、植物片を多く含む。
以上より、砂礫層が途切れて植物片に富む粘土層が優勢となる24.20mを第一礫層と熱田層の境界とした。
D熱田層と第二礫層(海部層)の境界
27.90mから粘土に礫が含まれるようになり、27.95〜28.00mにかけて良く締まった堅い礫層が現れる。28.00m〜31.10mは基質が流された礫のみが残っている。この礫質の部分は第二礫層に相当すると考えられる。
従って、礫層が流失している部分もありやや情報不足ではあるが、粘土優勢層の下部と礫層の上部が熱田層と第二礫層の境界に相当すると考えられる。
E第二礫層と東海層群の境界
28.00〜31.10mの間の礫は、基質を失って移動してしまっているが、深度を増すごとに粗粒になっているようにも見える。31.10〜32.50m付近にかけて、締まりが非常に良い礫混じりの砂層及びシルト層となる。32.50〜33.00mはコアが流失しており、33.0mからは締まりの良い青灰色の砂及びシルトが主体となる。これより深い部分では特にシルトや粘土の締まりがよく、同様の岩相が最深部70.00mまで続く。岩相から、33.00mは既に東海層群に属すると判断される。一方、31.00m付近までは礫のみしか残さないが、岩相と締まりがやや悪いことから第二礫層と思われる。従って、第二礫層と東海層群の境界部は31.00〜33.00mの間にあると推定される。しかし、この区間においては礫の量が次第に少なくなるものの、礫を含んでいることから少なくとも32.50m付近までは第二礫層と考える。
従って、第二礫層と東海層群の境界部は32.50〜33.00mの間に存在すると考えられる。残念ながら、この区間はコアが欠落しているため、便宜上、33.00mを第二礫層と東海層群の境界部とする。