2−1−2 試験探査

(1)ノイズ測定および試験探査

断層推定位置ならびに探査に必要な諸条件から、@案およびA案を東海市新宝町内に設定し、試験探査結果を比較することで、より良質なデータの得られる試験探査測線を本探査測線とすることとした。

2測線のうち、それぞれ新宝緑地運動公園内の区間で、ノイズ測定及びドロップヒッターを震源とした試験探査を実施した。

それぞれ測線T−1(@案)、T−2(A案)とする。測線位置を図2−1−2に示す。

(2)探査仕様

T−1とT−2の2測線でノイズ測定を行った。測定の方法は、浅層反射法探査と同様に測線を設置し、探査に使用する探鉱器でノイズを記録した。試験測定の仕様を以下に示す。

測線位置:愛知県東海市新宝町の新宝緑地運動公園内

測線長:2測線(T−1:300m、T−2:297m)

起震方法:ドロップヒッターによるP波起震(20回スタック)

起震点数:4点(T−1:275m及び300m、T−2:250m及び275m)

受振点間隔:5m(受振点数各60点)

記録チャンネル数:60チャンネル

サンプリング間隔:0.5ミリ秒

記録長:1.024秒

(3)使用機器

試験探査における使用機器を表2−1−1に示す。

表2−1−1 試験探査使用機器一覧表

(4)ノイズ測定結果

ノイズ測定結果を図2−1−3に示す。これらの記録は、受振器で捉えたノイズ振動を、モニター上で全チャンネルに等しく増幅させたものである。

T−1では、付近を通過する車両が非常に少ないためノイズレベルが小さい。部分的に南方からのノイズの混入が認められる。26チャンネルのノイズは、測線内に停車中のトラックによるものである

T−2では、幅10m程の植樹帯と歩道を隔て、測線に平行する県道名古屋半田線を走る自動車の影響が顕著である。交通量が多く、特に大型車の混入が多いのが特徴である。赤信号点灯中も、測線内の他の区間では車両が動いており、交通の合間を見ての測定は時間的に困難であった。また、頭上に高圧送電線があり、これもノイズ源のひとつと考えられる。T−1と同様に、部分的に南方からのノイズの混入が認められる。

図2−1−2 試験探査測線位置図

図2−1−3 ノイズ状況

(5)試験探査結果

T−1(@案)及びT−2(A案)で試験探査を実施した。起震点近傍の局所的な影響を避けるため、T−1では275mと300mの2地点で、T−2では250mと275mの2地点でドロップヒッターにより起震した。スタック数は20回とした。

(ア)T−1(@案)

図2−1−4に、T−1での測定で得られたショットギャザーを示す。初動は測線全体で明瞭に記録されている。

これにローカットフィルター(35Hz以下を除去)をかけたものが図2−1−5である。初動がより明瞭に読み取れる。また、部分的に南方からのノイズが認められる。

図2−1−4 ショットギャザー(T−1)

図2−1−5 ショットギャザー(T−1、ローカットフィルター)

(イ)T−2(A案)

図2−1−6に、T−2での測定で得られたショットギャザーを示す。ノイズの影響を受け、初動は起震点から50m以上離れた受振点では読み取ることができない。これは、測定後の解析作業の大きな障害となる。

これにローカットフィルター(35Hz以下を除去)をかけたのが図2−1−7である。やや初動の波形が明瞭になったが、読み取れる範囲は起震点の近傍に限られる。ここでも、部分的に南方からのノイズが認められる。

図2−1−6 ショットギャザー(T−2)

図2−1−7 ショットギャザー(T−2、ローカットフィルター)

(6)浅層反射法探査測線の選定

T−1とT−2でのノイズ測定及び試験探査の結果と、探査にかかるいくつかの条件を勘案して、より良好な探査結果の得られることが予想される測線を選定する。

T−1は、全般にノイズの混入が少なく、その点からは良好な測定結果が期待される。一方、天白河口断層の通過予想位置は、@案の南端付近であるため、@案のままでは断層構造の全体を捉えられない可能性がある。そのため、@案よりも測線を南方へ200〜300 m程度延長することが望ましい。ただし、この場合には、緑園橋と、それに隣接する市道との交差点により、延長75mにわたって起震及び受振が不可能となる。この際のCDPの点数は欠測区間の周辺で減少することになるが、30以上は確保される。

また、解析後の断面図上では、欠測区間の周辺で、表層付近(概ね深度70mまで)の断面図が得られないことになる。ただし、表層以外では断面図は南北に連続して得られるため、結果の解釈に大きな影響は与えないものと考えられる。

T−2は、測線全体にわたって交通量が非常に多く、ノイズの混入が避けられない。また、交通の合間を見ての測定は、長時間の待機が必要となり、測定が進まないことが予想される。また、新宝緑地運動公園内の一部や、その北側隣接地の盛土上は、ミニバイブを搭載した起震車の進入が困難なため、所要の起震点が得られない可能性がある。県道上に測線を設定すれば、起震車の走行は可能だが、ノイズの増大、交通規制、安全確保などの問題が生じる。ただし、天白河口断層の通過予想位置を、測線の中央部に設定できる点では、@案よりもA案の方が有利である。

なお、全データに認められる南方からの直線的なノイズは、平成8年度に9号地で実施した浅層反射法探査で認められたものと同じで、遠方からのものと推定される。このノイズは、データ処理により除去可能である。

以上により、測定結果の品質と、作業効率を併せて考慮すれば、@案を浅層反射法探査測線に選定することが望ましい。また、その際に測線を南方へ200〜300 m程度延長することが適切であると考えられる。

表2−1−2 探査測線の比較

(7)震源の選定

本調査で適用されうるP波震源には、バイブレーター(ミニバイブ)と重錘落下型(ドロップヒッター)が挙げられる。

バイブレーター(ミニバイブ)は、予め設定した周波数帯域の震動を、8秒から10秒間隔で連続的に発生できることと、エネルギーが大きいため、ノイズ振動の影響を比較的受けにくい。また、低周波の発生が可能なため、透過性に優れ、一般的にオフセット距離及び探査深度ともに大きい。ただし、高周波の発生は少なく、極浅層部の地質構造を詳細に見る点ではドロップヒッターの方が優れているとされる。また、自動車の荷台後部に設置してあるため、自動車の進入できる測線での使用に限定される。

重錘落下型(ドロップヒッター)は、重さ50Kgの錘を高さ1mあまりから落下させるもので、高周波の弾性波を発生させることができる。そのため、極浅層部の詳細な地質構造が得られることが多い。また、小型震源のため、持ち運びが容易である。ただし、低周波成分が少なく、透過性はミニバイブより小さい。調査地の地質状況によっては、オフセット距離及び探査深度ともミニバイブより小さいとされる。エネルギーが小さいため、ノイズの影響を受けやすい。

東海市新宝町の探査予定地付近は、新しい埋立地で低速度のため、高周波が減衰し、ドロップヒッターでも高周波成分(詳細な地質構造)が得られる可能性は少ない(T−1の西側隣接地は天白貯木場跡地であり、平成3年測量の地形図では「埋立中」と記載されている)。また、探査深度300mを達成できない可能性があり、震源については透過性に優れたものが求められる。

平成8年度調査では、埋立地である名古屋市港区潮見町(9号地)でミニバイブを使用した浅層反射法探査を実施し、深度1000mまでの深度断面図の作成に成功している。今年度調査における浅層反射法探査の目的から、東海層群中の反射波を把握することが必要なため、前年度の実績からミニバイブによる起震の方が確実であると考えられる。また、これにより、両年度の解析結果の比較が同一仕様のもとに可能となる。

以上により、震源にはミニバイブを使用することが望ましいと考えられる。

表2−1−3 震源の比較