天白河口断層の実態をより明確にするために、「最新名古屋地盤図(1988)」のボーリング資料のほかに、本業務で収集したボーリング資料から、その柱状図を「既存ボーリング資料」としてとりまとめた(巻末資料1−A)。
「最新名古屋地盤図(1988)」及びその他資料の既存ボーリング位置は、下記に示す平面図に示した。
図2−1−7 既存調査位置図<名古屋地盤図>(1/50,000)
図2−1−8 既存調査位置図<その他資料> (1/50,000)
各ボーリング地点を直接結び、かつ、断層線にできるだけ直交するようにして作成した地質断面図が、図2−1−9に示す@〜Hの9つの断面図である。また、図2−1−19に示す1つの東西方向の地質断面図も作成した。なお、「最新名古屋地盤図」の資料地点の位置は、東西約115m南北90mのメッシュ内での表示である。
図2−1−9 断面位置図(1/50,000)
図2−1−10 地質断面図 @断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−11 地質断面図 A断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−12 地質断面図 B断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−13 地質断面図 C断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−14 地質断面図 D断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−15 地質断面図 E断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−16 地質断面図 F断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−17 地質断面図 G断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−18 地質断面図 H断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
図2−1−19 地質断面図 A断面(横:1/10,000、縦:1/1,000)
この「既存ボーリング資料」の断面図の作図にあたっては、東海層群(矢田川累層)の落ち込み、または深度が深くなって確認できない位置を−−−?で示した。
東海層群の落ち込み、または深度が深くなって確認できない位置は、図2−1−6に示したように、平面的に東北東−西南西の方向に概ね連続することが推定された。この位置より北側では、第三紀鮮新世の東海層群上面(更新世中期の海部・弥富累層の基底面)−以下基盤と呼ぶ−の深度をボーリング資料では確認出来ない場合が多い。
@、A、C、D断面では、基盤の確認できる位置と基盤が未確認となる境界が明瞭であり、基盤深度分布も北側に落ち込んでいる。その比高差は、10〜30m以上で西側ほど大きくなっている。B、E断面では、ボーリング間隔が広いため、位置の特定は不明瞭であるが、東西両側の断面から推定できる。F、G、H断面では、ボーリング間隔が広いことから、位置の特定は難しい。
以上、既存ボーリング資料から東海層群の落ち込む位置は、音波探査実施海域付近までは推定可能であるが、これ以西の位置は不明である。なお、更新世後期の大曽根層・鳥居松礫層、第一礫層、濃尾層および完新世の沖積世(南陽層)などの地層の分布からは、これらの地層を変位させている資料は得られていない。
(2)地層区分の対比における問題点・疑問等
既存のボーリング資料には、層序区分に関していくつかの問題があった。以下それらの問題と、本調査における扱いを列挙する。
1)収集した資料には、層序未区分の柱状図もあった(例えばボーリング79等)。
断面図の作成に際しては、周辺の区分された柱状と対比しながら区分を行った。
2)同一系列では、概ね層序区分は系統的になされている。しかし、同系列資料でも、 不自然ないしは、疑問な区分が見られる。以下がその例である。各資料とも年代測定 等を実施しているわけではなく、N値等からの判断であり、やむをえない面がある。 なおBは、「最新名古屋地盤図」(1988)を前後した、新旧の区分の相違を反映してい るものと思われる。
こうした場合の地層断面図における層序区分界は、各資料の区分を尊重した。
@比較的平坦なD3層(熱田層)基底面に現れる凸形状(図2−1−19:ボーリング123)。
A沖合部におけるP層(東海層群)の起状(図2−1−18:ボーリング110,図2−1−19:ボ ーリング119)。以上は、「最新名古屋地盤図」による。
B東海層群の上にのる薄いD層(鳥居松礫層)とDm層(八事・唐山層)の礫層の区分
3)各資料の層序区分は、基本的に資料の年代によって「名古屋地盤図」および「最新 名古屋地盤図」に準じている。しかし、別系列どうしの区分では、かなり区分界が不 自然なつながりとなる場合がある。以下がその例である。
@図2−1−16:ボーリング89、91と90
A図2−1−17:ボーリング99、と100
B図2−1−18:ボーリング110、111と146
@〜Bに関しては、「最新名古屋地盤図」の資料地点の位置が、東西約115m南北90mのメッシュ内での表示であるため、当然位置の誤差が生じている。この点を考慮すると、ある程度の不自然さはなくなると考えられる。ただし、Bの例では、D3層とDm層の境界に不自然さが残される。
以上のとおり、別系列どうしの資料では、層序区分の連続性に不自然さがある程度入ってくる。しかし、基本となる「最新名古屋地盤図」も、土質とN値のデータのみであり、位置にも不正確さを持っている事等から、他系列資料との対比の妥当性を論することは難しい。従って各断面図においては、各資料の区分を尊重した。
柱状図の記載記事等の詳細な検討をした上で、既存ボーリング資料の地質区分の対比を再検討するなど、今後の課題として残る。