9 おわりに

雲仙活断層群については、これまで地形的な特徴から、多くの活断層があるとされてきたが、断層活動性のパラメータ(断層の位置、方向、長さ、活動度、最新活動時期、活動間隔、1回変位量)についてはほとんど調査がなされていなかった。

今回の調査により、多くの断層露頭が確認され、各断層の活動性に関する情報も明らかになってきた。今回の調査で区分した雲仙活断層群の3つの断層帯に属する個々の断層は、断層帯として一度に活動する可能性があり、その場合はマグニチュード7.1〜7.3規模の地震が発生する可能性がある。一方、断層帯に属する一部の断層群が個別に活動する可能性もあり、その場合は地震の規模は小さくなるが、より頻繁に活動する可能性が高い。

本調査地域は、陸域では火山地域であるため調査適地が少なく、個々の断層の中には活動性に関する情報が得られていなものも残されている。また、海域についても、完新統が潮流で削剥されていたり、新期の岩屑なだれ堆積物で覆われているため、活動性に関する調査ができない海域も存在する。

そのため、南縁東部断層帯については、将来の活動予測に不可欠な情報である、最新活動時期や活動間隔が明らかにできなかった。

また、雲仙活断層群は分布が海域に及んでいることから、海域での断層活動による津波の発生も予想される。しかし、今回の調査では、過去に発生した津波に関する実地調査や、断層運動によって発生する津波の規模や周辺沿岸部へ影響等については未調査である。

さらに、本調査によって、新たに存在が明らかになった橘湾西部の断層群は、変位の方向や活動時期の違いから、雲仙活断層群とは別の断層であることが明らかとなった(橘湾西部断層帯)。この断層群は長崎半島の海岸付近まで分布しているが、西方延長に位置する長崎半島陸域や、さらに長崎半島西側の海域への延長の可能性については未調査である。

これらの残された問題については、今後も調査を進めていく必要がある。