再決定された震源分布を図6−2に示す。また、本調査による断層分布と震源分布の関係を図6−3に示す。震源分布(特に深度分布)の地域的特長を検討するため、地域毎に南北断面を作成した(図6−4)。
再決定された震源分布は島原半島中央部(雲仙火山山頂部)から西側に多数集中して発生している。
島原半島の平成新山より東側及び島原湾では地震活動が低調で、これらの震源分布から雲仙活断層群の東端を推定することはできない。
また、今回の再決定により、震源分布は多数のクラスターから成ることがより明瞭に示されたが、それぞれのクラスターは個々の活断層とは必ずしも対応しておらず、現在の微小地震活動が調査対象の活断層(千々石断層など)で発生していないことが示唆される(図6−3)。したがって、これらの震源分布から個々の活断層のパラメータを推定することはできなかった。
一方、得られた震源分布には、橘湾と天草灘の間に地震活動がきわめて低調な領域が認められ、橘湾の活動がそのまま天草灘に連続していないことが示唆される(図6−5)。
この領域は、海上音波探査や活動性の検討結果から、島原半島から連続する北落ちセンスの断層群(橘湾南部断層群)と、橘湾西部の南落ち主体の断層群(橘湾西部断層帯)の境界付近に位置しており、ここを境界として断層パラメータ(断層の落ちの方向)が変化している。
したがって、断層パラメータが変化すること、地震活動にギャップがあることから、この領域を境に断層群を分けて考えるべきと思われる。
今回の震源分布の解析結果から、微小地震の発生域の深さ(下限)は、雲仙火山付近で浅く(数km)、雲仙火山から離れるにしたがって深くなっている(15〜20km)ことが示された。これらの特徴は、地殻の火山による地下の温度分布や物性によるものと考えられ、雲仙活断層群で発生する内陸地震の断層幅を推定するうえで重要な情報である。