橘湾北部断層群においては、有喜沖のF−4断層について約11、000年前以降の活動性に関する調査を実施した。
F−4断層では、2,956−3,186年前〜4,575−4,820年前(イベントF4−1)にイベントが認められ、6,628−6,762年前〜7314−7466年前(イベントF4−2)にもイベントがあった可能性がある。火山灰層との関係では、イベントは含軽石火山灰層の堆積直後、イベントF4−2は鬼界アカホヤ火山灰層堆積直後に当たる。これらが2回のイベントであったとした場合、その活動間隔は1,800〜4,500年と推定される。
F−4断層の2回の活動時期は、同じく2回のイベントが認められる後述する橘湾南部断層群におけるF−3断層やF−5断層とは時期が異なっており、別の断層に属すると考えられる。
(b)橘湾南部断層群
橘湾南部断層群においては、金浜−小浜沖のF−1〜F−3断層に関して約11,000年前以降の活動性について、また、橘湾中央部のF−5断層に関して約8,000年前以降の活動性について調査した。
F−1断層については、イベントの時期が特定できなかった。
F−2断層については、1回のイベント(F2−2:4,405−4,535年前〜7,048−7,260年前)と、1回のイベントの可能性(F2−1:4,404−4,535年前以降)が認められた。しかし、両イベントの境界の時期について不明瞭である。
F−3断層については、899−1,038年前〜2,108−2,318年前(イベントF3−1)と4,475−4,705年前〜5,342−5,522年前(イベントF3−2)の2回のイベントが認められる。火山灰層との関係ではイベントF3−1がスコリア火山灰降下の後、イベントF3−2は軽石火山灰層堆積前後に相当する。これらの活動間隔は2,200−4,600年と推定される。
F−5断層については、671−835年前〜3,026−3,245年前(イベントF5−1)と4,353−4,569年前〜4.964−5,178年前(イベントF5−2)の2回のイベントが認められる。火山灰層との関係では、イベントF5−1が底リア火山灰降下後、イベントF5−2が軽石火山灰降下後に当たる。これらの活動間隔は1,200−4,500年と推定される。
以上に述べた活動性の解析結果からは、2回のイベントが認められたF−3断層とF−5断層は活動時期が類似している。このことから、周辺に断層が少なく地理的に孤立しているF−5断層は、北落ちの断層であることも含め、橘湾南部断層群に属すると考えられる。
(c)橘湾西部断層帯
橘湾西部断層帯においては、F−6断層とF−7断層に関して、約8,000年前以降の活動性について調査した。
F−6断層については、3,278−3,813年前以降(イベントF6−1)と5,740−5,805年前〜6,628− 6,741年前(イベントF6−2)の2回のイベントの可能性が認められた。
F−7断層については、4,234−4,118年前以降(イベントF6−1)と5,778−5,825年前〜6,771− 6,855年前(イベントF6−2)の2回のイベントの可能性が認められた。
両断層のイベントは時期が類似しているが、上述した橘湾南部断層群のF−3、F−5断層の活動時期とは異なっている。したがって、活動時期が異なることからも、橘湾西部断層帯が雲仙活断層群とは別の断層であることが示される。